松田瑞生 気分転換の占いで大号泣し「ふっきれた」 過度な練習やめ自然体 悲願の初五輪へ「リベンジ」誓う
今夏のパリ五輪の出場権をかけたマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)ファイナルチャレンジとなる大阪国際女子マラソンは28日、大阪・ヤンマースタジアム長居発着の42・195キロで行われる。26日は有力選手の記者会見が大阪市内で行われ、松田瑞生(28)=ダイハツ=は、初の五輪切符獲得と地元・大阪での4度目Vへ「コンディションはとてもいいです」と自信をのぞかせた。
苦い記憶を塗り替える。東京五輪選考会となった20年1月の大阪国際女子で2時間21分47秒の好タイムをマークしながら、3月の名古屋ウィメンズで一山に国内最高の2時間20分29秒で上回られ、東京五輪は補欠となった。「4年前、(代表切符に)手がかかったその瞬間に落ちたので、そのリベンジができたらなと思います」と雪辱の五輪切符を狙う。
以前と違うのは、肩の力が抜けていることだ。練習時間は従来よりも10分~20分減らし、睡眠時間は多めに取っている。鍛え抜かれた腹筋から“腹筋女王”の異名で知られるが、トレーニングでの腹筋はやめて、体幹など走り方の向上に力を注いできた。「持ち味は走り込みで、『これだけ走る』と自信を持ってスタートラインに立てたタイプだったので、その考えを変えるのが難しかった。でもオーバーワークで走りすぎてる自分を毎回経験してきて、ちょっとこれは変えないと体が持たないかなと思いました」と、自身を見つめ直している。
変化を後押ししたのは意外なきっかけだった。昨年10月のMGCは右脛骨の骨膜炎のため欠場。松田のパリ五輪出場はファイナルチャレンジで設定記録の2時間21分41秒を突破することが必須条件となり、苦しい状況下にあった。そんな時に、08年北京五輪5000メートル代表の小林祐梨子さんに「気が紛れるよ」と気分転換に誘われ、神戸の占い師を一緒に訪ねた。
「怖いぐらい当てられて。もう大号泣するぐらい、私の過去を当てられちゃって。そのときに『あなたは周りの人のいうことを聞きなさい。周りの人に助けてもらって、手をさしのべられたらちゃんと受け入れなさい』と。いろんな方からもらうアドバイスを真摯(しんし)に受け止めて、聞いてみようと思ったきっかけになった」
第三者の声だからこそ、心に響いた。特に「あなた苦しかったね」と言われたことが刺さり、大号泣。その様子を見ていた小林さんも「(占い師は)前向きなことをおっしゃってて。ありきたりなアドバイスかもしれないんですけど、第三者に言われたのが強烈だったんだと思います。知らない人の『頑張ったね』が強烈に効いたみたい」と、当時の様子を明かした。
松田は会見で、「『本当にゼロ』『自分は今何も持っていない』『何も経験してきてない』と思うようにしたら少し気持ちが楽になった。背負うものもたくさんあるんですけど、いろいろ変えれたんじゃないか、ふっきれたんじゃないかなと思います」と晴れやかに言った。目標タイムは一山の国内記録で、「そこが(五輪への)最低ライン」と位置づける。「大阪生まれ、大阪育ち、大阪から世界に羽ばたくと言ってきたので、最後ここから世界に羽ばたきたいなという気持ちが強い」。悲願の五輪切符へ、浪速路を力強く走り抜ける。