祖父もきっと喜んでる 琴ノ若「琴桜」襲名胸に大関決めた 幕内自己最高13勝 優勝決定戦は「悔しいです」

 優勝が決まる一番で気合がみなぎる琴ノ若(撮影・開出牧)
 琴ノ若が上手投げで翔猿を下す
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 「大相撲初場所・千秋楽」(28日、両国国技館)

 「大関琴ノ若」誕生へ-。関脇琴ノ若(26)=佐渡ケ嶽=が本割で翔猿を上手投げで退け、大関昇進の目安とされる三役で直近3場所の合計33勝に到達。2敗同士の優勝決定戦は横綱照ノ富士に寄り切られて初優勝を逃したものの、番付編成を担う審判部は昇進を諮る臨時理事会の招集を八角理事長(元横綱北勝海)に要請し、受諾された。これまで理事会で昇進が見送られた例はない。母方の祖父が元横綱琴桜(故人)、父は師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)の相撲一家に生まれた角界のサラブレッド。31日の春場所(3月10日初日、エディオンアリーナ大阪)の番付編成会議と理事会を経て、正式に昇進が決まる。

 執念はわずかに届かなかった。鬼気迫る表情でぶつかった優勝決定戦。真っ向勝負で横綱に挑んだ琴ノ若は、俵を割って敗れる最後の瞬間までも、つかんだ右まわしを離さなかった。初の賜杯を目前で逃し、支度部屋で報道陣に囲まれると「悔しいです」と目を赤くしながら声を震わせ、言葉を紡いだ。

 それでも、本割はバッチリと決めた。過去6勝6敗の翔猿戦。懐に飛び込まれて揺さぶられたが、左で上手をつかんでしまえばお構いなし。出し投げ気味に打ち、がら空きの首元を右で押さえてとどめを刺した。

 大関昇進で『琴桜』襲名-。小学生の頃に、生前の先代と交わした約束を果たせる。「やるしかない。しっかりと精進します」。三役で直近3場所合計33勝をクリアし、臨時理事会の招集も決まり、大関昇進は確実。父で師匠の佐渡ケ嶽審判部長は「ここ2年は負け越しなく安定している」と見解を語った。

 祖父もきっと天国で喜んでいるはずだ。祖父は幕内優勝5回の横綱琴桜。先代佐渡ケ嶽親方で、部屋の稽古では将且少年を「マサカツ、マサカツ」と呼んでは横に座らせ、相撲を見せてかわいがった。

 ただ、相撲には厳しかった。将且少年は小学校低学年時、大会で獲得した銀メダルを先代に見せに行くと怒られたという。「負けた時は賞状もメダルも持って帰らないようにしていたけど、金メダルだけ都合良く持って行った」。先代が07年8月に敗血症による多臓器不全で亡くなってから16年半。孫はたくましくなった。

 条件は整った。31日には昇進伝達式が行われる。ただ、しばらくは襲名を見送る“大関琴ノ若”誕生プランもある。佐渡ケ嶽親方は「大関に昇進したら『琴桜』は先代と約束はしていますから。もういつでも変えられるので」と説明。19年名古屋場所から襲名した『琴ノ若』のしこ名にこだわりを見せたことは「師匠としても親としてもありがたい」と言う。

 幕内自己最高の13勝2敗。お預けとなった初賜杯を取り返すには「こうやって負けるのではまだまだ。しっかり稽古してやるしかない」と、これから大関となる者の自覚を込めた。

 ◆千葉県出身大関の誕生 1955年秋場所後昇進の松登以来69年ぶり

 ◆佐渡ケ嶽部屋に在籍した大関 2011年秋場所後昇進の琴奨菊以来7人目

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