張本智和「言葉が出ない」「神様が勝たせてくれた」 死闘制し日本一返り咲き「正真正銘の日本のエース」

 日本一に輝き、コーチ(左)と抱き合う張本智和=撮影・吉澤敬太
 戸上隼輔(手前)と対戦する張本智和
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 「卓球・全日本選手権」(28日、東京体育館)

 男子シングルス決勝は、パリ五輪代表を決めている張本智和(20)=智和企画=が、2連覇中の戸上隼輔(22)=明大=とのフルゲームの死闘を4-3で制した。計8度のマッチポイントをしのいで大逆転。14歳で史上最年少制覇となった18年大会以来、6年ぶりの日本一に返り咲いた。女子シングルス決勝は、早田ひな(23)=日本生命=が15歳の張本美和(木下アカデミー)を4-0のストレートで下し、2年連続3度目の優勝を飾った。

 「チョレイ!!」の雄たけびはおろか、体が硬直して動かない。死闘を制した張本智は、放心状態でがくっと膝から崩れ落ち、両手で顔を覆った。「言葉が出ない」。14歳で最年少優勝を飾ってから2198日。エースと呼ばれながら日本一から遠ざかっていた屈辱の日々を回想し「初優勝なんじゃないかというくらい全日本での優勝の仕方を忘れていた。2度目の優勝まで長かった。喜びよりもそっちの方が強い」と目を赤くした。

 前回決勝でも敗れていた天敵に、またも押される展開。先に3ゲームを奪われ、計8度のマッチポイントを握られたが、執念で決勝点をしのぐたび、会場は異様な空気に包まれていく。奇跡的な逆転劇に「神様が勝たせてくれたとしか思えない」と正直な声が漏れた。

 2年間の代表選考レースは首位を独走し続け、早々に切符をもぎ取った。国際大会に軸足を移しながらも、心残りは遠ざかっていた日本一のタイトルだった。中学2年で王者となって以降、声援が重荷になったこともある。

 「がむしゃらにボールだけを見て打っていた少年が、いろんなしがらみに巻きつけられていた。疑心暗鬼になったり、自分を信じられない時期があったが、やっと正真正銘の日本のエースと胸を張って言える。あの時の喜びより100倍価値がある」。大きな宿題を片付け、心置きなく金メダルを目指すための準備は整った。

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