柔道・鈴木桂治監督、優勝ウルフ・アロンを評価も「勘違いしないで」パリ五輪決定的も危機感「復活したという思い全くない」
柔道男子日本代表の鈴木桂治監督(43)が9日、フランス遠征から帰国し、羽田空港で取材に応じた。グランドスラム・パリ大会の男子100キロ級で、東京五輪金メダルのウルフ・アロン(27)=パーク24=が東京五輪以来となる国際大会での優勝を果たしたことを受け、「試合内容もいい形。これ以上ない成績で、金メダルは非常に大きいと考えている」と評価。全階級で唯一決まってなかったパリ五輪代表内定が決定的となり、14日の強化委員会で審議するが、「選考の理由として(今回の優勝は)納得できる形なのかなと思う」とうなずいた。
ライバルだった新井道大(東海大)が3回戦で敗退した一方、ウルフは粘り強く戦いながら持ち味の足技や内股を駆使し、国際舞台では2年半ぶりとなる頂点に輝いた。鈴木監督は「体のキレと心は(連動して)一つだと思うんですよ。精神的な強さとか、土壇場での強さってものが、本来の技術を出させたんだと思う」と講評。同級担当の小野卓志コーチも「試合中の集中力、目の力がすごかった」と話していたといい、指揮官は「窮地に追い込まれたときの強さは(新井より)ウルフの方が上だった」と五輪王者の底力をたたえた。
ただ、ウルフを筆頭に低迷していた同階級では、これでようやく五輪出場圏内に届く状況になったに過ぎない。今後、五輪に向けて数大会派遣する考えを示した。
鈴木監督は「代表が決まったとしても、まだそれ(スタートライン)だけなので。我々は満足してない。(強化委員会で選考に)答えが出たとしたら、ここからがウルフ・アロンの五輪なので、本当に勘違いしないで。今回たまたま良かった試合内容が五輪で出せるか(が問題)。もう大丈夫だって思いは全くないです」とくぎを刺し、「ウルフ復活したわ、という思いは僕らは全くないです。まだまだ、これ(成績の波)が激しすぎるので非常に怖いです」と厳しい表情を崩さなかった。