本多灯 200メートルバタフライで金 世界選手権で日本勢初「五輪に向けて準備ができた」
「水泳・世界選手権」(14日、ドーハ)
競泳男子200メートルバタフライ決勝で、東京五輪銀メダリストの本多灯(22)=イトマン東京=が1分53秒88で金メダルを獲得した。この種目で日本勢初の世界選手権制覇。本多は2022、23年世界選手権で連続3位だった。男子200メートル個人メドレー準決勝で瀬戸大也(CHARIS&Co.)は1分57秒85の全体4位で決勝へ進んだ。
勝負は最後の50メートルにもつれた。本多の前半は53秒90と自己ベストよりも速いペース。そこへラツェッティ(イタリア)が迫ってくる。150メートルを同時に折り返した。
「負けるな負けるな」「動かせ動かせ」。自分に言い聞かせながら万全ではない脚をけり、懸命に腕をかいた。0秒77差をつけてタッチ。今大会の日本チーム金メダル第1号となった22歳は、初めてつかんだ世界一に「アクシデントを乗り越えられたという自信がついた」と誇らしげだった。
ドーハへ出発した5日、荷物を持って自宅マンションの階段を下りていた際に1段踏み外して、左足首をひねった。痛みに不安を覚えたが、堀之内コーチに「言い訳はなしね」と言い渡され「出るからには全力を尽くす」と腹をくくった。
覚悟を支える練習は積んできた。冬場は、潜水しながらドルフィンキックだけで25メートルを何度も泳ぐメニューを繰り返した。今大会を欠場した前回王者のマルシャン(フランス)も取り組む強化策で持久力を磨いたことが、決勝のラスト勝負で生きた。
五輪半年前の難しい時期に開催された今大会は、有力選手が多数欠場。出場する選択を最高の形で実らせ「五輪に向け準備ができた」と弾みをつけた。その前にパリ五輪日本代表選考会(3月17日~、東京アクアティクスセンター)でも圧倒的な強さを見せつけ、パリ行きの切符を手にするのは大前提。五輪銀メダリストは勢いに乗って、真夏のパリでマルシャンら強豪とぶつかる。
◆本多 灯(ほんだ・ともる)2001年12月31日、横浜市出身。日大藤沢高から日大に進学し、4年在学中。200メートルバタフライで19年世界ジュニア選手権2位。東京五輪では銀メダルを獲得した。世界選手権は22年、23年と2大会連続銅メダルを手にした。短水路(25メートルプール)の世界記録保持者。173センチ、75キロ。