元横綱白鵬の宮城野親方 「深く反省」師匠剥奪 弟子の後輩暴行で厳罰、2階級降格に減俸 春場所は一門から師匠代行
日本相撲協会は23日、東京・両国国技館で臨時理事会を開き、元横綱白鵬の宮城野親方(38)に2階級降格と減俸3カ月20%の処分を科すことを決めた。弟子の幕内北青鵬(22)による後輩力士2人への日常的な暴力行為に関する監督責任を問われた。委員から最下位の年寄(再雇用者の参与を除く)への降格となる。さらに、春場所(3月10日初日、エディオンアリーナ大阪)は所属する伊勢ケ浜一門が任命した師匠代行が宮城野部屋を監督することが決定。4月以降は一門が部屋を預かることも検討され、宮城野親方は師匠の立場を剥奪される厳しい方針が示された。引退届を提出していた北青鵬については申し出を受理し、引退勧告に相当する事案だったことを確認した。
部屋に戻った宮城野親方の顔は紅潮していた。史上最多45度の優勝を誇る大横綱に下された厳罰。ショックの色がありありと浮かんでいた。
降格と減俸の処分以上に厳しいのは、部屋の一門預かりや師匠代行を置く点だ。相撲協会は発表で「師匠としての素養、自覚が大きく欠如している」とし、4月以降も期間未定で「伊勢ケ浜一門が宮城野部屋を預かり、師匠・親方としての指導・教育を行うことを検討する」とした。今後は一門と協会執行部が協議し、方針を決める。過去には2010年に師匠が暴力団関係者の観戦に関わったとされた木瀬部屋が、同じ一門の北の湖部屋預かりとなり約2年間、事実上の閉鎖となったケースがある。
厳罰の要因として、協会のコンプライアンス委員会の答申には、監督責任に加えて報告義務違反も挙がった。22年名古屋場所中に最初の暴行事実を知ったにもかかわらず、先代親方や協会に報告しなかったことが、日常的な暴力につながったと指摘。昨年九州場所中の器物損壊と暴行事案も速やかに報告しなかった点を問題視された。さらには「現役時代に3回の処分を受けていることを勘案」し、委員として「不適当」とした。芝田山広報部長(元横綱大乃国)は「コンプラ委の中では『相撲協会から排除すべきではないか』という意見も出たようです」と説明した。
宮城野親方は、部屋の前で報道陣に対応し「相撲協会、大相撲ファン、応援してくれている方々に心配をおかけしたことを深く反省し、申し訳ない気持ちでいっぱいです」と謝罪。北青鵬とともに3度、頭を下げた。部屋には再入幕を期す伯桜鵬ら期待のホープも多い。親方としての信頼回復へ、険しい道が待っている。
◆大相撲の近年の暴行問題
17年11月 横綱日馬富士が10月の秋巡業中、幕内貴ノ岩に暴行して負傷させたことが発覚。
18年12月 幕内貴ノ岩が同月の冬巡業中、付け人の三段目力士を平手と拳で4、5発殴打。
19年9月 十両貴ノ富士が8月末に付け人の序二段力士に暴行したことが発覚。
20年7月 部屋の師匠だった中川親方に弟子3人に対しての暴言、暴力があったことが発覚し、中川部屋は閉鎖に。
22年12月 伊勢ケ浜部屋の幕下力士が4~8月にかけて、弟弟子を角材で殴打、熱湯をかけてやけどを負わせるなどしたことが発覚。
23年5月 陸奥部屋の幕下以下力士が22年12月から翌年1月にかけて、弟弟子に拳で頬を殴るなどの暴力を繰り返したことが発覚。