福島市出身「大波三兄弟」3・11初の白星そろい踏み 若元春「意義がある」若隆元「勝つことでしか恩返しできない」
「大相撲春場所・2日目」(11日、エディオンアリーナ大阪)
福島市出身の「大波三兄弟」が、東日本大震災が発生した3月11日では初めての白星そろい踏みを果たした。次男の関脇若元春(30)が平幕明生を寄り倒して連勝発進。三男の十両若隆景(29)、長男の幕下若隆元(32)とともに、故郷に雄姿を届けた。横綱照ノ富士は宇良を下して初白星。一方で大関陣は琴ノ若、貴景勝、霧島の3人が敗れる波乱。豊昇龍は連敗を免れたが、横綱大関陣の無敗は早くもいなくなった。
特別な日に抱く思いは力に変わった。若元春は迷いなく前に出た。得意の左四つで右上手を引き、明生のすくい投げもこらえて寄り倒し。引き締まった表情のまま、勝ち名乗りを受けた。
三兄弟の最後を締める白星。3・11にそろって相撲をとるのは4年ぶり2度目で、全員が勝ったのは初めてだ。「節目の日にそろって白星を届けられたのは意義があるのかな」。そう言って充実感をのぞかせた。
震災当時、自身と若隆景は高校生。すでに若隆元が所属していた東京の荒汐部屋で約1カ月、避難生活を送った。あれから13年。「あの時は何もできることがない、ただの高校生。今、この番付で頑張っている姿を見てもらえるのはありがたいこと。なおのこと頑張らないといけない」。被災した立場から、故郷を勇気づける立場に変わった。責任感だけでなく、そのやりがいもある。
若隆景は逆襲から玉正鳳を押し出した。復興への道を歩む福島と同じように、自身も昨年の右膝手術からの復活ロードを進んでいる。「土俵で活躍することが一番。いい相撲が見せられたら」と意気込みを新たにした。
若隆元は琴大進を肩すかしで退け「今日は勝ちたかった。勝つことでしか(地元に)恩返しできないので」としみじみ言った。節目の日にあらためてかみしめた思い。「復興に対し少しでも力に、励みになれれば」と若元春。これからも故郷に元気を届けるべく、三兄弟は土俵に上がる。