尊富士 大鵬以来64年ぶり新入幕無傷10連勝 “エリート”大の里押し出し 110年ぶり新入幕賜杯も視界
「大相撲春場所・10日目」(19日、エディオンアリーナ大阪)
新入幕の尊富士が、1敗だった平幕大の里を押し出して全勝を守った。新入幕の初日から10連勝は、1場所15日制が定着した1949年夏場所以降では60年初場所の大鵬以来2人目。後続に2差をつけ、1914年夏場所の両国以来110年ぶりの新入幕優勝が視界に入ってきた。新大関琴ノ若は王鵬を下して2敗をキープ。かど番の貴景勝は関脇大栄翔に突き落とされ、3敗に後退した。
大一番も電光石火で決めた。鋭い踏み込みで浅いもろ差しになった尊富士は、大の里のスキを逃さなかった。引き込むような右上手投げに乗じて一気に前へ。最後は体ごと押し出した。「歓声がすごかった。でも、土俵は自分と大の里だけ。真っ向からいい相撲をとろうと思った」。注目の新鋭対決。腹をくくって、最高の自分をぶつけた。
意地があった。1学年下の大の里とは学生時代に何度か対戦し、勝ったり負けたり。ただ、大の里は大学で個人タイトル14冠に輝き、幕下10枚目格付け出しでデビュー。大学でタイトルとは無縁だった尊富士は、序ノ口から駆け上がってきた。「彼が入った時、必ず大舞台で対戦してやるという一心で稽古してきた。早い段階で実現できてうれしい」。ざんばら頭のエリートを、ちょんまげ頭の反骨心が上回った。
兄弟子のバトンも受け取った。この日、引退会見に臨んだ元幕内照強に「頑張れよ。応援してるよ」と激励された。「その分、頑張れたかな」と尊富士。「横綱や部屋の関取衆の背中を見て育ってきた」という感謝を結果でしっかり示した。
1場所15日制定着以降、10日目を終えて2差をつけた平幕単独トップは昨年春場所の翠富士以来4人目。00年春場所の貴闘力、01年秋場所の琴光喜は優勝した。11日目は琴ノ若と初の大関戦。「相手は僕より上の方ばかり。向かっていく気持ち。僕が硬くなる必要はない」。110年ぶりの新入幕Vへ、無心の若武者が挑む。