師匠の伊勢ケ浜親方が瞳を潤ませ「気持ちはグッときていますよ」弟子の尊富士の新入幕優勝をNHK中継で解説
「大相撲春場所・千秋楽」(24日、エディオンアリーナ大阪)
東前頭17枚目の尊富士(24)=伊勢ケ浜=が、豪ノ山を押し倒しで破り、13勝2敗で優勝を決めた。新入幕力士の優勝は、1914年夏場所の両国以来110年ぶりの快挙となった。
尊富士は14日目の朝乃山戦で2敗目を喫した際、右足を負傷。千秋楽の出場が危ぶまれたが、右足首をテーピングで固定して土俵に上がった。NHKの中継で解説を務めた師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は「よく自分から攻めましたね。一瞬前に押して、残されたのでオッと思ったが、その後態勢を整えてまた自分から攻めてよかった」と弟子の相撲を褒めた。
取組後、右足を引きずるようにして引き揚げた尊富士の姿に「痛いでしょうね。それよりも気持ちの方が勝っていたんじゃないですか」と話した。
取組前は「無理はさせたくない」と話していた師匠だが、取組後は「でもこの一番は止めて後悔させるよりは、勝っても負けてもやるという本人の強い意思もありますから」。中継で表情が映し出された伊勢ケ浜親方の瞳は潤んでいるように見え「気持ちはグッときていますよ」と話した。
その後、前夜の部屋でのやり取りを紹介。「無理でしょうね。靱帯(じんたい)伸びてますから。最初は『無理です』って言ってきた。抱えられて帰ってきたので」と一度はこの日の出場を断念しかかったという。「でに夜に一人で部屋に入ってきて『やっぱりやりたい。痛みを打っても飲んでも何してでもこの一番だけなんでやりたい』と」。その後師匠はしばらく考えたといい「この一番は歴史的にも大きな一番ですので止められないでしょう。止める方も後悔するし、止められた方も後悔する。僕はちょっと自分自身を我慢して、じゃあやればと話した」と振り返った。
尊富士は14日目の朝乃山戦で2敗目を喫した際、右足を負傷。車いすで引き揚げ、装具で右膝下を固定された状態で救急搬送されていた。師匠は患部の状態について「状態はあまりよくない。(右の)足首をちょっとけがしてます」と説明していた。