競泳 入江陵介が引退会見で涙 声をつまらせながら「幸せ」3度繰り返す パリ五輪出場逃し「パリの地で引退したかった」の思いも
競泳男子で4大会連続で五輪に出場し、12年ロンドン大会では背泳ぎ2種目を含む3つのメダルを獲得した入江陵介(34)=イトマン東進=が引退した。3日に都内で会見を行い、黒色のスーツに身を包んで登場。0歳のベビースイミングから水に触れ、16歳から日の丸を背負った現役生活を振り返り、声をつまらせながら「幸せ」を3度繰り返した。
「長く競技人生を送ることができて幸せだった。自分自身の力では、ここまでくることができなかったし、感謝したい。高校2年生から18年間、日本代表として戦うことができて幸せでした。パリ五輪に行きたかった気持ちはある。パリの地で引退したかった気持ちは強かったけど、最後のレースを日本の地で、たくさんの人の前で泳ぎ切れたのが幸せな瞬間だった」
最終レースは3月に行われた24年パリ五輪選考会。34歳を迎え、肩のけがや十分な食事をしても体重が2~3キロ落ちるなど、年齢にあらがいながら戦い続けた。100メートル背泳ぎは2位に入るも派遣標準記録に届かず、同200メートルでは3位に沈み、日本競泳会最多の5大会連続出場を逃した。その直後に「これが最後だな。自分の出番や場所はない」と退く覚悟を決めたという。
今後は所属のイトマン東進に籍を置きながら、「水と触れ合う楽しさを伝えていきたい」と後進の育成や、スポーツマネジメントやスポーツ政策を学ぶために大学院進学を視野に入れている。報道陣から「入江選手にとって水泳とは」と報道陣に問われると、「ぽっかり穴の空いたような感じ。思い浮かばない。水泳がないのが…」と上を見上げて涙。「うれしい気持ちも、悲しい気持ちもある」とかみしめた。
数々の功績を打ち立てたレジェンドがプールを去る。ただ背泳ぎ2種目で打ち立てた日本記録はいまだに破られておらず、今後も競泳界に目指すべき指標として残り続ける。「たくさんのことを日本代表で学んでほしい。苦しいこともたくさんあると思うけど、楽しむことを忘れずに水泳を嫌いにならずに続けてほしい」。最後は晴れやかな表情で、後輩たちにエールを送った。
◆入江陵介(いりえ・りょうすけ)1990年1月24日、大阪市出身。0歳から水泳をはじめ、中学から本格的に背泳ぎに転向。近大付高、近大卒。100メートル、200メートル背泳ぎの日本記録保持者。世界選手権は09年から8大会連続出場。11年大会は200メートル2位、100メートルで3位。五輪は08年北京大会から21年東京五輪まで4大会連続出場。12年ロンドン大会では200メートル銀、100メートル銅、400メートルメドレーリレーで銀。178センチ。