史上最速Vの大の里 「相撲は好きやけど、稽古は好きじゃない」それでも必死に食らいついて 小学生時代指導の恩師が明かす素顔

 「大相撲夏場所・千秋楽」(26日、両国国技館)

 新小結大の里が阿炎を破って12勝3敗で初優勝を果たした。初土俵から所要7場所目の初V。今年春場所の尊富士の10場所を上回る史上最速で、幕下付け出しでも1972年夏場所の輪島の15場所目を上回る史上最速優勝となった。地元の石川県津幡町ではパブリックビューイングが行われ、約400人が歓喜。小学生時代の大の里をコーチとして指導した長井恒輝さん(31)は、教え子の思い出と故郷愛を明かし、さらなる活躍を期待した。

  ◇  ◇

 小さな町が生んだ大きなヒーローになった。大の里が生まれ育った石川県津幡町の人口は約3万7000人。小5からの2年間、津幡少年相撲教室でコーチとして大の里を教えた長井さんは「愛嬌(あいきょう)のある、子供らしい可愛らしい子でしたね」と印象を明かした。

 稽古は週2回で1回2時間。小学生10人ほどの町の小さなクラブで、同学年には1人か2人。大の里の稽古相手は、必然的に長井さんら指導者になった。一丁押しやぶつかり稽古で胸を借りたが、まだ現役だった長井さんの体重は123キロあり、当時の監督は約160キロ。「自分らにぶつかる時には、泣きながらやっていた時もあった。本人も『相撲は好きやけど、稽古は好きじゃない』と」。それでも、必死に食らいついてきた姿が思い出にあるという。

 中学から新潟に相撲留学した大の里。日体大時代にも地元の教室で子供たちと一緒に稽古したり、故郷愛は変わらない。昨年末、津幡町の後援会から化粧まわしを贈られた。後援会の事務局にも携わる長井さんは「町の化粧まわしをいつも場所の後半につけてくれる。それもすごくうれしい」と気遣いに感謝する。

 大の里時代到来を予感させる初優勝。歓喜に沸く町から、長井さんは「もっともっと先がある。これから長く愛される力士になってほしい」と活躍を願った。(デイリースポーツ・藤田昌央)

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