隆の勝 照ノ富士撃破で初V残った 本人が一番驚き「あり得ない」無欲の奇跡へ全力

 照ノ富士(右)を寄り切りで破る隆の勝(撮影・持木克友)
 支度部屋で笑顔を見せる隆の勝(代表撮影)
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 「大相撲名古屋場所・14日目」(27日、ドルフィンズアリーナ)

 3敗だった平幕隆の勝が1敗だった横綱照ノ富士を寄り切り、初優勝の望みをつないだ。直接対決で通算3個目の金星を挙げ、優勝決定を阻止。過去に例のない13日目終了時2差からの逆転Vの可能性を残して、千秋楽に臨む。賜杯の行方は2人に絞られ、千秋楽で2敗の照ノ富士が大関琴桜に勝つか、隆の勝が関脇大の里に敗れれば、照ノ富士が3場所ぶり10回目の優勝。照ノ富士が敗れて隆の勝が勝った場合のみ、優勝決定戦となる。

 誰もが驚く大仕事。一番驚いたのは、他ならぬ隆の勝本人だった。「ちょっと『えっ!?』と思っちゃって。『あり得ない』ってフワフワしてましたね」。勝利の瞬間は夢心地で、直後に飛び交う座布団が頭を直撃。「座布団が当たって『勝ったんだ』って元に戻った」と、人懐っこい笑顔で振り返った。

 立ち合いで頭から当たると、右腕をたぐろうとした照ノ富士の動きをかいくぐり、のど輪と左おっつけで一気に押し込んだ。そのまま休まず、右を差して寄り切り。反撃の隙すら与えなかった。

 2022年夏場所でも優勝争いを経験。「めちゃめちゃ緊張して、頭が真っ白になっていた」と、首位並走の千秋楽で敗れて力尽きた。そんな経験もあって、この日の朝稽古後には「2差ついているし、優勝できると思っていない。緊張もない。自分の力がどこまで通用するか楽しみ」と肩の力が抜け、実力を発揮する準備はできていた。

 夏場所は2勝6敗から勝ち越し。さらにみっちり稽古を積んで迎えた今場所では、番付上位相手にも白星が続いた。2年前と同じ終盤のV争いでも「その時より自信を持って土俵に立てている」と違いを自覚している。

 数年前から、前の場所の取組を見返し、反省点をメモに書き出して稽古で修正。自宅の玄関先にはちぎったメモを張り、地方場所では保存したメモの画像をスマホの待ち受けにして、常に意識する。そんな地道な取り組みも続けてきた。「調子のいい横綱に勝てたのは自信になる。とにかく明日も全力で自分の相撲をとり切れればいいかな」。2日には結婚を公表したばかり。いつもニコニコ“おにぎり君”の無欲が、奇跡の逆転Vを呼び込むかもしれない。

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