照ノ富士 V10 2場所連続休場明けでも綱の貫禄 名横綱“仲間入り”史上15人目「理想的な相撲完成してきた」

 八角理事長(右)から賜杯を授与される照ノ富士=ドルフィンズアリーナ(撮影・持木克友)
 10回目の優勝をきめパレードの車に乗り万歳する照ノ富士(右)と熱海富士(左)=ドルフィンズアリーナ(撮影・持木克友)
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 「大相撲名古屋場所・千秋楽」(28日、ドルフィンズアリーナ)

 横綱照ノ富士が12勝3敗で並んだ平幕隆の勝との優勝決定戦を制し、3場所ぶり10回目の優勝を飾った。本割は大関琴桜に上手出し投げで敗れたが、決定戦では前日に敗れた相手を寄り切って雪辱。2場所連続休場明けでも、最高位の貫禄を示した。優勝10回は史上15人目。名古屋で開催された本場所では、自身初の優勝となった。惜しくも初優勝を逃した隆の勝は敢闘賞を受賞した。

 追い込まれてなどいなかった。平然とした表情が強さの象徴だった。勝てば優勝の本割で敗れ、もつれ込んだ決定戦を制してのV10。勝ち名乗りを受ける土俵上でも、引き揚げた支度部屋でも、照ノ富士は表情を変えなかった。「ホッとしています」という言葉とは対照的な落ち着き。横綱はやはり横綱だった。

 本割では過去6戦全勝だった琴桜に、前に出たところで上手出し投げを食った。14日目からの2連敗。それでも「どっしりと構えていこうと思った。何回もそういう状況で相撲をとってきた」と心はぶれなかった。決定戦では、勢いに乗る隆の勝にもろ差しを許しても慌てない。後退しながら素早く右を巻き替えると、体勢を整えて反撃。前に出て左上手を引き、腰をしっかりと割って粘る相手を寄り切った。

 目標に公言してきた10回目の優勝。達成者は名だたる横綱ばかりだ。「とりあえずみなさんに約束してきたことを果たせたかな」と充実感をにじませた。名古屋での初Vには「名古屋で応援してくださった方たちの前で、いい姿と見せたいと思って頑張りました」と優勝インタビューに笑顔で答え、大きな拍手を浴びた。

 追い求めるものを見つけた15日間にもなった。「今まで目指していた理想的な相撲にちょっとでも完成してきたかな」。そう手応えを明かした。伊勢ケ浜部屋に転籍以来、師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)には「前に落ちてもいいんだよ」と言われてきた。まわしを引かずとも、相手に体重をかけて圧力をかける取り口。初日から始まった連勝中に「今までどうしてもできなかった」というその理想を体現できた感覚があった。

 両膝や腰に爆弾を抱える体調は、万全になることはない。その中で綱の重責を果たしながら一切の妥協なく、さらなる高みを求め続ける。次の目標は「11回目でしょう」。さらりと言った不屈の横綱に、まだまだ他の追随を許す気配はない。

 ◆照ノ富士春雄(てるのふじ・はるお)本名・杉野森正山。1991年11月29日、モンゴル・ウランバートル出身。2009年3月に来日し鳥取城北高に相撲留学。11年1月に間垣部屋に入門し、5月の技量審査場所で初土俵。13年3月限りで部屋が閉鎖し伊勢ケ浜部屋に移籍。14年春場所で新入幕。15年夏場所で初優勝し、場所後に大関昇進。17年九州場所で関脇に陥落し、19年春場所で西序二段48枚目まで降下。20年7月場所で再入幕し、21年春場所後に大関に復帰。同名古屋場所後、横綱に昇進した。優勝10回、殊勲賞3回、敢闘賞3回、技能賞3回。得意は右四つ、寄り。21年8月に日本国籍を取得した。家族はドルジハンド夫人、長男・テムジンくん。192センチ、176キロ。

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