元十両輝鵬の川副 じん帯損傷から復活の三段目V「自分の心の中で決めた使命があった」宮城野親方も笑顔で祝福
「大相撲秋場所・13日目」(20日、両国国技館)
元十両輝鵬で西三段目51枚目の川副(伊勢ケ浜)が、清乃海との全勝対決を寄り倒しで制し、三段目優勝を果たした。
立ち合いは左で張られたものの、もろ差しに成功。まわしをがっつりつんで60キロ近く体格の勝る巨体をつり上げ、一気に土俵際まで運んで寄り倒した。軍配は清乃海に上がったが、物言いの末に軍配差し違えとなった。
川副は新十両で輝鵬のしこ名に改めた昨年名古屋場所で「左足リスフラン関節じん帯損傷」の故障を負った。次の秋場所では12日目から途中休場し、十両在位わずか2場所で幕下転落となった。11月にはじん帯再建手術を行い、2024年の春場所まで3場所連続の全休を経て、夏場所13日目に復帰。名古屋場所は序二段まで番付を落としていた。
日大出身で、2021年には学生横綱に輝き、22年に宮城野部屋に入門。将来も期待される経歴を歩んできたが、さらなる番付を目指すところで、じん帯損傷の大けがを負い「新十両の時にこのまま休場した方が良いのか悩んだ」という。それでも、支えてくれる協会の人間や関係者を心の励みに「必ず戻らないといけないと、自分の心の中で決めた使命があった」と関取復帰を決意した。
今年4月には宮城野部屋当面閉鎖に伴う伊勢ケ浜部屋転籍もあったが、「気持ちも強くなったし、こんなんで辞められない」。「初心に戻る」という覚悟を込め、夏場所には川副のしこ名に戻していた。転籍後は横綱照ノ富士や同じ小兵の翠富士の相撲に取り組む姿勢を学び、何より転籍前からの兄弟子・炎鵬が頸椎(けいつい)損傷で再起不能寸前から復活する姿に「並大抵の努力じゃない。学ばないわけにはいかない」と感銘を受けた。
優勝を決めて花道を引き揚げると、宮城野親方(元横綱白鵬)が笑顔で出迎えてくれた。「おめでとう」と祝福しつつも、転籍前から指導していた弟子の相撲に「お前なんで緊張してんだよ」と硬さを感じ取っていた。川副は今場所は全勝優勝を果たしたが、実は以前の十両昇進前を含めても5連勝以上したことがなく、本人も自覚なしに緊張していた。まだ、復活の道半ばの弟子に師匠は「ばかやろう、緊張するな。ここまで来たら楽しむんだ」と温かい激励を送っていた。