大の里 歴史的スピードなぜ大関当確できたのか 元横綱貴乃花と同様「別格の才能」 名伯楽が明かす資質

 優勝を決めた大の里
 日体大時代の大の里(左)と阿武剋(提供写真)
 大の里を指導した日体大相撲部の斎藤一雄監督
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 「大相撲秋場所・14日目」(21日、両国国技館)

 関脇大の里が2場所ぶり2度目の優勝を決めた。大関豊昇龍を押し出し、自身初の13勝目を挙げた。初土俵からわずか所要9場所。昇進目安とされる三役で3場所合計33勝に達して昭和以降最速の大関昇進を確実としていた中で、花を添える賜杯を手にした。関脇以下で年2回の優勝は、1992年の貴花田以来2人目。昇進前3場所で2回の優勝は年6場所制が定着した58年以降では初、34年春場所の男女ノ川以来90年ぶりの快挙。記録づくめの大器の源は?日体大相撲部の恩師に聞いた。

  ◇  ◇

 記録的なスピードで歴史を塗り替えていく大の里。規格外の大器は、どのように強さを身に付けていったのか。一気に結果を出すようになった大学時代に指導したのが、日体大相撲部の斎藤一雄監督(56)。飛躍的な成長を遂げた教え子の軌跡を振り返った。

 全国屈指の強豪を20年率い、多くの関取を育てた斎藤監督。現役時代もアマチュア横綱に輝いた名伯楽が「自分が時間を共にしてきた人で、この2人は別格の才能を持っている」と挙げたのが、明大中野中の後輩である元横綱貴乃花、そして大の里だった。

 大の里の最大の長所を、斎藤監督は「スピードは超一流」と即答する。パワーや技術は人並み。ただ「あの体であのスピードは尋常じゃない」と、規格外の速さとサイズを兼ね備えた力士は他に類を見ない。

 才能の片りんをのぞかせていた高校時代は「決定的な弱点があった」(斎藤監督)という。それは「左手の使い方。左手がうまく使えないから、右手ばかりに頼っていた」。スピードと体を生かしながら、弱点をカバーする方法を指導していった。すると1年時から学生横綱のタイトルを獲得。「彼は賢い子。強くなるにはどうしたらいいかわかる」という吸収力もあった。右差しを研究された名古屋場所の反省を生かし、左からの攻めも光る今場所の姿に重なるものがある。

 たくさんの教え子を見てきた中で、食事の量にも驚かされた。しかも「太るのは簡単。いくらでも太れます」「200キロぐらい、すぐなれます」と平然と話す様子に衝撃を受けたという。「そんなこと言った子は聞いたことがない。大したもんだなと」と笑って振り返り「逆にセーブして、太り過ぎないようにやっていた。アスリート感覚を持っている。積極的な休養を取って体を増やしたり、そういうところがクレバー」と評価した。

 斎藤監督は日体大で、五輪に出場するようなアスリートを相手に教壇に立つ。柔道の阿部詩、スキージャンプの高梨沙羅らに共通して言えるのは「ピカピカと光り輝いている。オーラがどこかのタイミングで見え隠れする」こと。もちろん「中村も光り輝いています」と、大の里にも同じ資質を感じとっている。

 2度目の優勝を飾り、大関昇進も確実。「やるべきことを自分で考えてやっているし、プロに行ってから敗戦を反省材料にしているところが見える」と目を細めた斎藤監督。横綱への期待もかかる教え子へ「今の自分が過去の自分と比較してどうなのか、未来はどうありたいのかを常に追求してやってくれると思います。そこを追求していければおのずと結果はついてくる」と信頼感たっぷりにエールを送った。

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