ちょんまげ大関へ電車道 大の里V貫禄の2度目 初土俵から9場所&90年ぶり昇進前3場所で2回優勝

 豊昇龍を破り満足げな表情の大の里(撮影・持木克友)
 多くの懸賞を手にする大の里
 豊昇龍(左)を激しく攻める大の里
3枚

 「大相撲秋場所・14日目」(21日、両国国技館)

 関脇大の里が2場所ぶり2度目の優勝を決めた。2差をつけた単独トップの状況から大関豊昇龍を押し出し、自身初の13勝目を挙げた。幕下10枚目格付け出しの初土俵から、わずか所要9場所。昇進目安とされる三役で3場所合計33勝に達して昭和以降最速の大関昇進を確実としていた中で、花を添える賜杯を手にした。元日に発生した能登半島地震に続き、この日豪雨被害があった故郷・石川県に雄姿を届けた。

 鬼神のごとく強かった。大関となるのにふさわしい貫禄を漂わせ、大の里は「どうだ!」と言わんばかりの表情で胸を張った。2度目の歓喜に涙はない。4カ月前の最速初Vから、さらに成長した姿で堂々と優勝を決めた。

 不戦勝を除けば3戦全敗だった豊昇龍を圧倒した。もろ手突きで一気に押し込むと、体をぶつけながら左、右と追撃。たった3発の電車道で勝負を決めた。「うれしいですね。先場所の悔しさを反省して、生かし切れた」。冷静な口調に、ぶれないメンタルを貫いた手応えがにじんだ。

 初めて大関昇進の可能性があった名古屋場所は、2連敗発進で9勝どまり。「考え過ぎた」と見えない敵にのみ込まれた。そんな時、同じ石川県出身の横綱輪島の大関とりの足跡を聞いた。52年前の夏場所で12勝の初V、名古屋で8勝。そこから秋場所13勝で昇進。目を見開き「めっちゃ似てる。輪島さんも意外と苦しんでいるんですね」と興味津々にうなずいた。誰もが簡単にはいかないと知って臨んだ今場所。苦境を乗り越えた偉大な先輩と同じ軌跡を、しっかりとたどってみせた。

 大関昇進を阻むものはもう何もない。昇進を預かる審判部の高田川部長(元関脇安芸乃島)は「明日(審判部の)みんなで集まる」と臨時理事会招集を要請することを示唆。「今日は一番いい相撲だった」と絶賛した。関脇以下で年2回の優勝は、1992年の貴花田以来2人目。昇進前3場所で2回の優勝は年6場所制が定着した58年以降では初、34年春場所の男女ノ川以来90年ぶりの快挙となる。

 地元への思いもあった。この日の朝、石川県の豪雨被害を知った。まず自分ができるのは、土俵で結果を残すこと。「大変な状況でも、自分が優勝して少しでも明るい話題を届けられてよかった」と務めを果たした。

 今年8月には、しこ名の由来となった大関大ノ里の故郷である青森県藤崎町を訪れ、大歓迎された。中高6年間を過ごした新潟からの応援もある。「藤崎町や新潟、石川の思いを背負ってやっている」と自負を明かした大の里。昭和以降最速の初土俵から所要9場所、前代未聞の“ちょんまげ大関”誕生へ。入門会見で誓った「日本中から応援される関取になるのが僕の夢」という未来は、猛スピードで近づいている。

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