ロス五輪で採用!近代五種大会で“SASUKE”初実施「ヤバイ」「怖い」「楽しい」選手は悲喜交々 そり立つ壁で失格者も、観客は盛況
「近代五種・全日本選手権」(3日、安城市スポーツセンター)
28年ロサンゼルス五輪から従来の馬術に代わって採用される新種目の障害物レースが国内大会で初めて実施された。いわゆるTBSの人気テレビ番組「SASUKE」に似たもので、全長約60メートルのコースに雲梯やつり輪など8つの障害物が設置され、フィニッシュ前には高さ3・5メートルの“そり立つ壁”が屹立。初めて挑戦した選手からは「ヤバい」「怖い」「楽しい」といった悲喜交々のさまざまな反応が見られた。
まだ見慣れない光景に不安と期待と緊張が入り交じった。陸上競技場のトラック内に設置されたコースで初めて障害物レースが実施され、見守った関係者や観客からも「頑張れ」「おお~」「落ち着いて」「ああ~っ」などと選手の一挙手一投足に歓声が上がり、本家同様、ギャラリーの応援にも自然と熱が入った。
本家の「SASUKE」とはやや異なり、各セクションの難易度自体は低く、2人同時にスタートしてフィニッシュタイムで争われるが、同一の障害物で2回失敗すれば失格となる。雲梯で落ちる選手や、ゴールしたものの「滑るのが怖くて攻められなかった」といった悔恨の声も。また、快調に進んでいたにもかかわらず、最後のそり立つ壁を登り切れずに無念の失格となった女子選手は「ヤバい」「怖かった」などと、初対面の難しさに戸惑いの声をあげた。
一方、本家SASUKEの出場経験も豊富な俳優の森渉(SEISA)は、障害物レースで男子1位の28秒87をマーク。「楽しかった。男の子なのでアスレチックが大好き」と童心に返って目を輝かせ、「ロス五輪を狙っているので、ここで1位を取るというより課題が見つかればいいと思っていた」と4年後を見据えた。
初めての実施で手探りなのは運営側も同様で、車輪のように回転する雲梯は1レースが終わるごとに開始位置が動くため、競技関係者から「1回ごとに直して」と指摘があり、公平性を期すために競技中に改善。また、各セクションの下にはマットが敷かれたが、反り立つ壁などは高さもあるだけに、担架や車いすを用意して見守っていた医療スタッフは「いや~怖かった。何もなくてよかった」と胸をなで下ろしていた。
日本協会の迫山幸一事務局長は「初めてコースを作ったので、日本の選手は練習したことがないので、練習すればもっとタイムが上がるのでは」と総括。また、馬術から障害物レースに代わったことで注目も集まり、今回出場した俳優の森のように近代五種に挑戦したいという問い合わせも増えているといい、「協会としては歓迎。今まではマイナースポーツだったが、知名度が上がれば競技人口も増えるので」と相乗効果に期待を込めた。
◆近代五種 1912年ストックホルム五輪から実施されている競技で、フェンシング、水泳、馬術、レーザーラン(射撃+ラン)の5種目の合計得点を争う競技だったが、28年ロス大会からは馬術に代わり、TBSの人気番組「SASUKE」に似た障害物レース(オブスタクル)が採用される。特色の異なる5つの競技の合計得点を競うことから「キング・オブ・スポーツ」とも呼ばれ、今夏のパリ五輪では男子の佐藤大宗(自衛隊)が日本史上初となる銀メダルを獲得した。