穏やかな琴桜 立ち合い“鬼の形相”は元横綱の祖父が降りてきているのかも
「大相撲九州場所・千秋楽」(24日、福岡国際センター)
琴桜が豊昇龍との21年ぶり大関同士の千秋楽相星決戦を制し、14勝1敗の好成績で悲願の初優勝を飾った。しこ名を継いだ祖父の琴桜(元横綱)と同じ大関在位5場所目の27歳で、初めて賜杯を抱いた。また琴桜のしこ名が優勝するのは、l1973年名古屋場所以来51年ぶり。同時に単独での年間最多勝を決めた。角界のサラブレッドが、来年初場所(1月12日初日、東京・両国国技館)で初の綱とりに挑む。
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ほわっとした穏やかな顔が、いきなり鬼の形相に変わる。時間いっぱいで塩を取り、立ち上がった瞬間の琴桜の表情だ。するどい眼光と、つり上がった眉。観客席からは「おぉ」と声が上がるが、そこには“戦闘モード”に圧倒された恐怖の感情が交ざっているようにも聞こえる。
本人に表情の秘密を聞いてみた。すると「ずっと力を入れてると出力が弱くなってくるから、瞬間だけ入れようと思ったのがきっかけだと思うけど…意識してやり始めてない。『やれ』と言われてもできない」と返ってきた。十両昇進時から付け人を務める三段目の琴ノ藤、床山の床響に聞いても「いつからなんだろう?」と口をそろえた。
時期や経緯は正確には分からなかった。ただ佐渡ケ嶽親方だけは「番付が上がるにつれてじゃないか。先代からも『鬼になれ』と言われていたし」と分析した。土俵で繰り広げられる生死をかけた戦い。時間いっぱいの瞬間だけは、元横綱の祖父が降りてきているのかもしれない。(デイリースポーツ・谷 凌弥)