やり投げでパリ五輪金の北口榛花 東京でも金だ! 9月世界選手権2連覇&世界新狙う
2024年パリ五輪陸上女子やり投げ金メダリスト、北口榛花(26)=JAL=がこのほど、新年に向けたインタビューに応じ、2連覇がかかる世界選手権(9月、東京)への思いを語った。パリ五輪で注目を浴びたヒロインはトレードマークの笑顔を見せながら、時折真剣な表情で夢の世界記録(72メートル28)への熱意も語った。
2024年、最も活躍した女性アスリートの1人が北口だ。パリ五輪では金メダルを獲得し、閉会式では日本選手を代表して旗手に抜てきされた。“パリの顔”として一躍脚光を浴び「金メダルという結果で終われてすごくホッとしたし、『よくやれたな』という感じ」と誇らしげに振り返った。
最高峰シリーズの各種目年間上位者によって争われるダイヤモンドリーグ(DL)ファイナルで日本勢初の2連覇を達成し、シーズンを終えて9月に帰国。その後は地元・北海道旭川市での凱旋(がいせん)パレードや表彰式など引っ張りだこだ。衣装が自前の時もあり「もうそろそろ大変」とうれしい悲鳴もあげた。出番が多い五輪金メダルも「保管というよりは、そこら辺に置いてある」と多忙ぶりを感じさせた。
25年は2連覇がかかる世界選手権が、東京で開催される。会場の国立競技場は21年東京五輪で12位となり「何にもできずに終わっちゃった」と無念を痛感した場所だ。当時は新型コロナ禍で無観客だっただけに「あんなに大きいのに誰もいないのは結構寂しかった。お客さんがたくさん来てくれると信じている」と思い出を塗り替える場にする。
充実期の今だから注目がうれしい。「昔は緊張するから『私のことなんて誰も見てない』(並行して行われるトラック種目で)『走っている人の方が見られている』と思って投げていた」。ただ、次第に考えは変化した。「人で埋め尽くされた競技場でやった方が気持ちも上がるし、頑張りたい気持ちにもなる」と力を得られるようになった。
パリ五輪期間中は毎日、夢の中で世界記録(72メートル28)を投げていた。これまでも「フワ~っと投げて盛り上がっているところぐらいまでは見えたりした」というが「具体的な記録まで見えていたのは初めて」とそれだけ思いが強かった。見たい“初夢”については「ぐっすり寝たい」と豪快に笑い飛ばすのが北口らしかった。
25年はへび年。「あんまり触りたいとか思えない」と冗談を交えながら「今、女子やり投げで一番年齢が上の選手が42歳。42歳までやると仮定しても、あと16年で世界大会が(再び)日本であることはないと思う」と現状を冷静に分析。「キャリアの中で一番の思い出になるのは先が寂しいけど、思い出に残る、そんな1年にしたい」と新年の抱負を掲げた。
パリ五輪で語った『名言が残せなかった』は、ユーキャン新語・流行語大賞のトップテン入りを果たすなど影響は広がっている。「好きなようにしゃべらせてもらっている」と笑いつつつ「これからも自分で思うことを自分の言葉で発信というか、発言していけたらいいなと思う」と見据えた。
天真らんまんなキャラとドラマチックな投てきで数々の“北口劇場”を繰り広げてきた26歳。新たな1年は、世界2連覇と夢の世界最長アーチで再び人々の胸を打つ。
◇北口 榛花(きたぐち・はるか)1998年3月16日、北海道旭川市出身。旭川東高を経て、日大卒。五輪は21年東京大会12位、24年パリ大会では日本女子のトラック・フィールド種目で初の金メダルを獲得。閉会式では旗手を務めた。DLで22年に日本勢初優勝。23年のDLファイナルを初制覇し、24年に日本勢初の2連覇を達成した。世界選手権は22年に日本女子投てき種目で初の銅メダル、23年に日本女子陸上界3人目の金メダルを獲得した。自己ベストは23年9月に出した67メートル38の日本記録。179センチ。
◆北口のパリ五輪VTR 8月7日の予選では、1回目から決勝進出ラインの62メートルを超える62メートル58を投げる“一撃”で、全体7位となり12人で争う決勝に進んだ。決勝は1回目で65メートル80を投げ、これが金メダルスコアになった。マラソン以外の陸上種目では日本女子初の快挙。これまで最終投で逆転することが多く『逆転の北口』と呼ばれたが、パリでは予選、決勝ともに“一発”で仕留める勝負強さを見せた。競技を終えると、金メダリストだけが鳴らすことができる競技場の「勝利の鐘」を絶叫しながら鳴らした。