箱根駅伝 衝撃を呼んだ65歳東大教授の給水係 古川は「八田先生、こんなに走れるんだ(笑)」「感動しました」東大リレーも実現
「箱根駅伝・復路」(3日、箱根町芦ノ湖駐車場~大手町)
オープン参加の関東学生連合は、当日変更で9区に投入された古川大晃(29)=東大院=が、1時間11分53秒で力走した。8区は秋吉拓真(21)=東大=との“赤門リレー”も実現。「(同じチームで)苦楽をともにした秋吉とリレーできて、僕にとって史上最強のチームメートだったので、彼とタスキをつなげたことは素晴らしい経験。幸運なこと」と感慨を込め、東大生として箱根出走経験もある近藤秀一コーチ(29)らも協力しており「東大総動員で、総力を挙げて戦った」と胸を張った。
東大リレーが実現した9区の中継所では、東大の校歌も高らかに響いた。「元気が出ました」(古川)。さらに、横浜駅前の給水では、白髪の男性が待ち受けていた。長く部長を務めてきた八田秀雄教授(65)で、「乳酸代謝、運動と疲労」を研究する権威で箱根駅伝の発展にも力を注いできた。
古川が熊本大生時代からランナーとして目をかけてくれており、研究活動でも相談に乗ってもらった恩人に、今回給水の打診をしたところ快諾。八田教授からは「本当に任せてもらえるなら、何でもする。沿道でいちばん近いところで古川を応援できるのは、これほどうれしいことはない」と言ってもらえたといい、「喜んでくださった。最近は毎日のようにメールで励ましの言葉と給水の打ち合わせをして、右から渡すか、左から渡すか、どのくらい(ドリンクを)入れるかとか(笑)。いろいろと丁寧に付き合ってくださった」と笑った。
白髪の東大教授が給水で並走する姿はSNSでも話題となったが、古川自身も感激したという。「八田先生、こんなに走れるんだ、って(笑)。結構並走してくださって、そこに感動した。打ち合わせではボトル1本だけ渡せればということだったが、水とドリンクの2本も渡してもらえて、こんなに(並んで)走れるんだって」。恩師から水を受け取ると笑みを浮かべてゴクリ。八田教授が両手を挙げてバンザイする中、エネルギーを送られた。
現在、集団走のメカニズムを力学的に解明する研究に取り組んでいるという。今後の目標について「1つはしっかり研究していきたい。ランナーとして真摯(しんし)に陸上に向き合ってきた中で感性を磨いてきたので、その経験を生かしていい研究ができれば。また、競技者としては世界で一番の博士号ランナーになりたい」と、マラソンでの2時間10分切りを掲げた。