照ノ富士は大相撲初場所に間に合うのか?興味深かった八角理事長の評価
「大相撲初場所」(12日初日、両国国技館)
横綱照ノ富士(伊勢ケ浜)は初場所に出場するのか。膝と腰のケガ、持病の糖尿病などで2場所連続休場中なだけに、気になるところだ。
7日には東京・明治神宮で奉納土俵入りを行った。報道陣に「今できることを精いっぱいやって、万全の状態まで持っていきたい。自分の中でできることをやっていく。1年が始まるということで、気を引き締めて一からやっていく」と語った。前向きながらも出場を明言はしなかった。
昨年は振れ幅の大きい一年だった。
初場所 13勝2敗
春場所 2勝5敗8休
夏場所 0勝2敗13休
名古屋 12勝3敗
秋場所 休場
九 州 休場
皆勤した初場所と名古屋は優勝。他4場所は休場だった。九州場所後の横綱審議委員会(横審)の定例会合では、山内昌之委員長(東大名誉教授)は照ノ富士に対して「激励」「注意」「引退勧告」を出す決議を行わず、静観する方針を明示している。
周囲に外堀を埋められ、進退がかかる状況ではない。ただ、年明けから照ノ富士自身が体調への手ごたえを口にし、6日の横審による稽古総見ではまずまずの相撲を取ったことで、出場への期待は高まりつつある。
総見では大関大の里を指名し、3勝4敗。土俵を割る度に悔しがり、大の里に助言を送る場面もあった。横審の山内委員長は「大の里を将来の後継として、いろいろ教えておこうというところが見られた」「大の里をライバルと思っているわけではないが、最終的にあとを託した、あるいは自分を乗り越えていくのは大の里と認知したんじゃないか」と、ロマンチックな感想を語っていた。
照ノ富士の現状に対して、興味深い評価を示したのは八角理事長(元横綱北勝海)だった。照ノ富士が大の里を指名した理由を、大の里には複雑な動きがないと指摘した上で「稽古台にちょうどいいって感じだろうね」と推察した。事実、照ノ富士は「同じ右四つですし。変な動きしたくないじゃん」と明かしている。
八角理事長は照ノ富士を「戻りつつある感じ。もうちょっと時間がほしいね」と評価。「10回優勝しているだけあって、うまいわな。左の使い方かな、大きい割にうまい。重さが出てきてるよね。番数なんだよ。番数が場所前にできるかどうかだろうね。もうちょっとだね、重さが出てくるのは。番数だよね。番数ができる気力があるかどうかだよね」と続けた。
照ノ富士の印象を「去年の巡業より全然違っていて、良くなってきている」と語った。出場した際は、場所で相撲を取りながら状態を上げていく形になるのか、との質問には「千代の富士さんがよくそういう形でやってたよね。休場かなと思っていたら出て、何とか勝ってるうちに千秋楽になったら元気になっている。(照ノ富士が優勝した)去年の1月はそうだったんじゃないかな」と答えた。
そして「照ノ富士、間に合うかどうかだよね。もうちょっと数がほしいね、番数が。頑張ってほしいよね。ようやくちょっと良くなってきて、きょうでだいぶ自信が付いたような気がしますけどね」と話していた。
一夜明け、照ノ富士はこの日は部屋で稽古を行い、「ぶつかりをメインにやりました」と明かした。前日に八角理事長が「もうちょっと時間がほしい」と言及したことを挙げ、初日に間に合うかを質問されると、冒頭の「今できることを精いっぱいやって、万全の状態まで持っていきたい-」と答える流れとなった。
横綱として目標に掲げていた10回の優勝は昨年名古屋で達成。今年の目標を問われ「それは次、11回目を目指して頑張ります」と語った照ノ富士。言葉は前向きだったが、表情は微妙だった気もする。度重なるケガを、パワーと実は巧みな技術で克服した輝きは、再び発揮されるのだろうか。