照ノ富士「失敗した」バランス崩し1秒で敗戦 横綱21場所目で5度目の黒星スタート
「大相撲初場所・初日」(12日、両国国技館)
1970年春場所の北の富士、玉の海以来、55年ぶりの横綱ダブル昇進へ白星発進だ。初の綱とりに挑む琴桜(27)=佐渡ケ嶽、豊昇龍(25)=立浪=の両大関は、それぞれ隆の勝(常盤山)、霧島(音羽山)をともに寄り切った。3場所ぶり出場の横綱照ノ富士(伊勢ケ浜)は小結若隆景(荒汐)の肩透かしに屈し、大関大の里(二所ノ関)は翔猿(追手風)に引き落とされた。先場所10勝で大関昇進の足固めを狙う関脇若元春(荒汐)は、熱海富士(伊勢ケ浜)を寄り切った。
照ノ富士は1秒余りで、不戦敗を除けば10戦全勝だった若隆景に屈した。相手の右の差し手を手繰ろうとするも、肩透かしにバランスを崩した。引き揚げる花道で「失敗した。当たってくるかと思った」と悔しげにつぶやき、支度部屋では付け人が取材を断った。
横綱21場所目で黒星スタートは5度目。優勝したのは2022年夏場所だけで、昨年は2度とも途中休場に追い込まれている。今場所で15日間皆勤を果たせなければ、進退を問う声が浮上しかねない。土俵下で見た九重審判長(元大関千代大海)は「後がないというのは本人が分かっている」と胸中を推し量った。
両膝痛を抱える照ノ富士は重い足取りで駐車場に向かい、付け人の手を借りて慎重に傾斜を下った。2日目は過去7勝5敗の隆の勝戦。苦境をはねのけてきた不屈の横綱が窮地に立たされた。