照ノ富士 家族の前で決死の169日ぶり星「自信になった」初日の黒星発進「すごく悔いが残っていた」
「大相撲初場所・2日目」(13日、両国国技館)
両膝痛などで3場所ぶりに出場した横綱照ノ富士は隆の勝を寄り切り、連敗を免れた。10度目の優勝を飾った昨年名古屋場所の優勝決定戦以来、169日ぶりの白星を手にした。母、妻、息子が会場で見守ったことを明かし、この一番に懸けた決意を物語った。綱とりの両大関は明暗が分かれ、琴桜は小結阿炎に突き出されて初黒星を喫し、豊昇龍は翔猿を寄り倒して2連勝とした。
横綱らしく、表情を変えず勝ち名乗りを受けた照ノ富士。ただ、その心中は激しく揺れ動いていたのだろう。支度部屋に戻り、腰かけると、万感の表情を浮かべて言った。
「自分の中でやれることをやってダメだったら、という思いはあったので。一つ自信になった。昨日は自分で変なことを考えて…すごく悔いが残っていた。もう一回、今までの相撲をやってみたいという思いだった。自分の全てを出し切りたい、後先考えずやりたいと思っていた」
相手は対戦成績で7勝5敗と、決して得意ではなかった隆の勝。立ち合いでもろ差しを許して押し込まれるも、左上手を引き反撃。土俵際で残られたが、再び寄って仕留めた。昨年名古屋場所の優勝決定戦以来169日ぶり、両国国技館では昨年初場所の優勝決定戦以来351日ぶりの白星だった。
館内では母、妻、長男が観戦していた。国技館の声援を「力になる」と答え「今日はお母さん、奥さんと子供が見てくれた。勝っている相撲を見せられて良かった」と続けた。
単なる1勝以上の意味を持っていたのだろう。両膝の装具を外した照ノ富士の表情は、終始硬いままだった。八角理事長(元横綱北勝海)は「苦労して必死で勝つことが大事。いつもと違う場所だから。普段なら最初の寄りで勝てるし、投げにもいけるが」と評価した。
持病の糖尿病、両膝痛、腰痛に苦しみ、昨年は6場所中4場所で休場。ただし、15日皆勤した2場所はいずれも賜杯を抱き、史上15人目となる10度目の優勝を手にした。意地と誇りを懸けた場所。引き揚げる表情に、悲壮な覚悟がにじんでいた。