大相撲の行司が腕をつねる暴行 協会は厳正に処分「暴力根絶を改めて伝える」
日本相撲協会は30日、「協会員の暴力行為に対する処分について」と題した文書を発表。行司(発表では所属部屋、行司名を記載)が後輩行司に対して暴力行為を行ったこと、その処分を明らかにした。
発端は昨年11月16日、同年秋場所から行司会の監督長を務めている行司(以下、監督行司)から、加害行司が九州場所中に行司Aの左上腕部をつねる暴行を加え、同部に皮下出血のアザを負わせたとの報告が、協会側に上がった。
協会が報告に基づき両者に確認したところ、加害行司は暴行を認め、行司Aは被害を申告した。
八角理事長(元横綱北勝海)は、暴力行為の確認を受け、同11月27日、青沼コンプライアンス委員長に、事実関係の調査と処分意見の答申を委嘱。青沼委員長は調査班の調査結果をまとめ、処分意見の答申を行った。
調査結果によると、加害行司は九州場所中の初日から5日目までに計5~6回ほど、行司Aの左上腕部を右手の指でつねる暴行を加え、左上腕部の裏側に皮下出血によるあざを負わせた。なお、行司Aはあざの治療は行っておらず、調査時にはあざは消失していた。
行司Aは5日目の夜、宿舎で部屋のトレーナーからあざについて尋ねられ、初めてあざができていると知った。加害行司の暴行を伝えたところ、トレーナーから行司会の監督に報告すべきと助言を受けた。
行司Aは、場所6日目(昨年11月15日)の午後5時過ぎに、監督行司に報告。監督行司は自身のスマートフォンであざの写真を撮影し、翌日に行司の所属部屋の師匠、並びに勝ノ浦コンプライアンス部長に本件を報告した。
その後、加害行司は行司Aに謝罪し、同年11月17日から場所を途中休場。行司Aは謝罪を受け入れたものの、調査のヒアリングでは、加害行司への適切な処分を求め、強い被害感情を抱いていた。
これらを総合し、加害行司の処分について、出場停止と報酬減額の懲戒処分が相当と判断され、その旨が八角理事長に意見答申された。
この日の理事会では、コンプライアンス委員会の処分意見通り、出場停止(春場所1場所)と報酬減額(法令に基づく金額)の併科とすることが決議された。八角理事長から加害行司に処分が通知された。
協会側は「今後は、全協会員に対し、暴力根絶を改めて伝えるとともに、師匠・年寄には、弟子の指導・監督の徹底、万一暴力が発生した場合の報告の徹底を通知する。また、行司会においても、行司全体の監督機能を強化すべく、その手法について、コンプライアンス部長と協議を進める」と、報告文書を締めくくった。
なお、加害行司が腕をつねる暴行に至った理由は記載されていない。その理由について協会側は「報告通りです」と答えた。