高安 2年半ぶり金星 豊昇龍に快勝し1敗死守「やり残したことがある」35歳の元大関が悲願初Vへ気合
「大相撲春場所・8日目」(16日、エディオンアリーナ大阪)
平幕の高安が横綱豊昇龍を押し倒し、2年半ぶりに6個目の金星を獲得した。一山本をはたき込んだ大関大の里、御嶽海をはたき込んだ平幕美ノ海とともに賜杯争いトップの1敗を守り、大関経験者が勝ち越しに王手をかけた。初のかど番で臨む大関琴桜は苦手の小結霧島を寄り倒し、3連勝で5勝3敗とした。トップの3人を追う2敗は平幕の尊富士、玉鷲、明生。
座布団が舞い、大歓声がこだまする。高安は充足感に浸った。「今が一番楽しい。やりがいがありますね。これだけの声援をいただき、感謝の気持ちでいっぱいです」。白髪も見える35歳の元大関が感慨を口にした。
立ち合いで左を差し、振りほどかれたが、いなして泳がせた。必死で右腕をたぐる豊昇龍を、その右腕で豪快に押し倒した。「流れが良かった。メリハリ良く取れました」と、うなずいた。
2022年秋場所で照ノ富士を破って以来の金星。「会場の熱気がすごかった。横綱に勝つのは達成感がありますね」。初土俵からちょうど20年、節目の場所で躍動を続けている。
高田川審判部長(元関脇安芸乃島)は高安に「元気いっぱい。どんどん前に出ている」と賛辞を贈った。大乃国(1987年九州場所)以来となる新横綱で中日までに3敗を喫した豊昇龍に対しては、これで通算10勝2敗と存在感を見せつけた。
支度部屋で入念に準備運動を行い、マッサージガンで筋肉をほぐす高安。師匠の田子ノ浦親方(元幕内隆の鶴)は「よく考えて体調を整えている。食事も野菜を多く取り、ご飯が増えないよう気をつけている」と、弟子の努力を認める。
2022年の春、九州場所では優勝決定戦で敗れた。腰に爆弾を抱えるだけに、後半戦に弱いと評価される。だが、高安は「あまり痛いところはない。ベストを尽くす」と不安を払拭。戦う原動力を「やり残したことがある。それだけです」と言い切り、悲願の初優勝へ気合を入れた。