たぬかな「たかがゲーム、されどゲーム」トップeプレーヤーが語る現在と未来
注目のeスポーツプレーヤー・たぬかな(26)がデイリースポーツの取材に応じ、eスポーツについて語り尽くした。たぬかなはプロチーム「CYCLOPS athlete gaming」に所属し、昨年は国内外20以上の大会に出場した傍ら、多くのメディアにも登場。eスポーツ旋風のど真ん中にいる彼女が“選手の視点”で現在のブームから今後の抱負までを徹底分析した。
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人気格闘ゲーム「鉄拳」のトッププレーヤーとして知られるたぬかな。昨年は「新語・流行語大賞」で「eスポーツ」がトップテン入りを果たし、続々と企業が参入するなど取り巻く環境や注目度がこの1年で大きく変わった。
「今までゲームをしている人は、どこか恥ずかしいというか非難の目で見られたりすることも多かったですけど、最近はゲームをしていると言いやすい世の中になってきたと思います」
たぬかなは昨年、eスポーツ界を“代表”し、メディアにも多く登場した。テレビ番組には20本以上出演したが、多くの選手は昨今のブームに戸惑いも感じているという。
「ゲームをやっている人はたかがゲームというところから入っている。趣味が高じて今もやっているだけで『ただのゲーマーだから』というのが私も含めてみんなが基本的に思っていること。スポーツ選手として取り上げられることに、まだ違和感しかないですね」
あくまで冷静な観点で分析する。「私からしてもゲームはゲームというところがあるので…。スポーツと言ってくださって、選手として見てくださるのはうれしいけど、自分からしたら昔からゲーセンでガチャガチャしてるだけだけどなという思いもあって。だからそこにズレがあることが多いですね」と、率直な胸の内を吐露した。
ほぼ毎日練習を続け、1日10時間以上トレーニングする日もあるというたぬかな。「どうしても女の子が少ない世界なので、アイドルとして扱われがちなところもあるんですけど、仕方ないんですが不本意ではあるので。真面目にやってきたのはこっち(ゲーム)かなというところはあるので、そこの間で割と苦しんでいたりもしますね」と、トッププレーヤーとしての自負をのぞかせる。
「水着やコスプレの仕事もきているようですけど、私は20歳を超えたらやったらアカンと思っているところもあって、それは断っています(笑い)」
たぬかなは昨年「海外の大会での優勝」を目標に掲げて活動し、サウジアラビアで開催された「鉄拳」の世界規模の大会で団体で優勝した。「今後につながる優勝だった」と振り返り、プレーヤーとしても成長を感じる1年だったと充実した表情を見せた。
eスポーツという言葉が市民権を得る中、課題に感じているのはゲームのプレー人口を増やしていくことだ。「今が一番、ゲーム業界で盛り上がっているはずなんです。ただ、取り上げられまくって一時的に流行(はや)っているようにしか私は思ってなくて」
たぬかなによると、eスポーツへの注目度ほど、ゲームのプレー人口は増えていない現状があるという。
「大事なのは、取り上げてもらった上でゲームをやってもらうこと。そこまで、まだいけていなくて…。取り上げてくれているのはプロゲーマーという職業があって、しかもお金も結構もらっているということ。ゲームそのものに興味を持ってもらえるようにしたいが、まだそこまでいけていないです。今は認知してもらっている途中」
今年の抱負についても「一昨年も去年も自分が勝つことを目標にしていましたけど、(今年は)具体的にやりたいことが一つありまして。どういう形であれ、地元の徳島にプロチームを立ち上げたいなと思って」と力を込めた。
eスポーツの国内リーグは現在、全国から5チームが参加している。「各県がチームを要していないので、ゆくゆくは全ての県から出るようにしたい。徳島は隠れたゲーマーがまだいるはず。そういう人がでてきて活躍できる場を作りたいと思います」。eスポーツに関心のない層にも“地元のチーム”として訴求していきたい。
「(いろんな人を)巻き込んでいきたい。まずは徳島で作って、それに続く県とかもでてきたらいいなと思っています」と目を輝かせた。たぬかなが成長著しい業界をさらに盛り上げていく。
◆たぬかな(本名谷加奈=たに・かな)1992年11月21日生まれ、26歳。徳島市出身。女性では日本国内2人目のプロゲーマーで、国内外で高い人気を誇る。高校時代に放課後、ゲームセンターに通っていた時に格闘ゲーム「鉄拳」に熱中し、現在に至る。MBS「YUBIWAZA」に準レギュラーとして出演中。