羽生「やってしまった」悔し5位発進
「フィギュアGPシリーズ第6戦・NHK杯」(28日、なみはやドーム)
男子ショートプログラム(SP)で、激突負傷した第3戦中国杯から3週間で強行復帰したソチ五輪金メダリストの羽生結弦(19)=ANA=はジャンプのミスが続出し、78・01点の5位と出遅れた。無良崇人(23)=HIROTA=は86・28点で首位に立ち、GPシリーズ上位6人が進むファイナル(12月12~14日、スペイン・バルセロナ)進出へ前進した。女子SPで村上佳菜子(20)=中京大=は64・38点で3位、宮原知子(16)=大阪・関大高=は60・69点で4位につけた。
激情的なピアノ曲の余韻に浸ることもなく、羽生はフィニッシュポーズを解いた。選手生命も危ぶまれた中国杯でのアクシデントから、わずか20日で迎えた復帰の舞台。冒頭の4回転ジャンプで転倒し、最後の連続3回転は最初のルッツで手をついてしまい単発になった。
「もう『やってしまったな』というのが正直な気持ち。すごく悔しい。こうやって笑うのもつらい」
5位-。戻ってきた光輝く銀盤は、悲壮な顔を映し出した。
五輪王者として自らに課した重圧が、手負いの体にさらなる足かせをつけた。直前の6分間練習では4回転トーループを連続で決めるなど、態勢は整ったかのように見えた。
しかし、本番では失敗。今季、頂上決戦となるGPファイナル出場を自らに義務づけてきた。強行出場を決めたのも、何よりファイナルの可能性があったからだ。
ただ、先を見据えすぎたことが、1演技1演技に込めてきた集中力をそいだ。「ここまで『ファイナル、ファイナル』と言ってきたけど、『ここはNHK杯だよ』って思った。もっとこの大会に集中しないと。それを今、自分自身すごく反省している」と自戒した。
最後まで負傷の影響は否定し続けた。ファイナル進出を自力で勝ち取れる3位までの得点差は、わずか1・67点。ただ、今はそんなことを言っている余裕はない。
「優勝とか3位までとかうんぬんじゃなく、ここまで突き落とされている。まあ自分で落としたんですけど…。まずこの試合をやりきらないと、何にもならない」
体力面に不安を残すフリーの4分30秒。全身全霊の演技の先にしか、奇跡は起こらない。