羽生SP首位!笑顔の世界最高点
「フィギュアスケートGPファイナル」(12日、バルセロナ)
男子ショートプログラム(SP)が行われ、大会2連覇を狙うソチ冬季五輪王者の羽生結弦(20)=ANA=が今季世界最高の94・08点で首位に立った。3季連続の出場で初の表彰台を目指す町田樹(24)=関大=が87・82点で2位につけた。マキシム・コフトゥン(19)=ロシア=が87・02点の3位で、初出場の無良崇人(23)=HIROTA=は78・35点で6位と出遅れた。
もの悲しいピアノの音色が止まり、羽生の顔に浮かんだのは、今季初めての心からの笑顔だった。決して完璧だったわけではない。最後のジャンプだったルッツ-トーループの連続3回転で転倒し、「やっちまった」。ただ、それすら首をすくめ、いたずらっぽく舌を出し、笑いとばした。心を満たしたのは悔しさより、ようやく本来の自分の演技ができた「幸せ」だった。
中国杯での壮絶な激突負傷から1カ月あまり。「久しぶりに曲を感じながら滑れた。新たな一歩」と、不安や恐怖心から解き放たれた。NHK杯では転倒が目立った冒頭の4回転トーループを完璧に決めると、続くトリプルアクセルも持ち前の高さとキレがあった。
「息切れする感じもほとんどなかった。練習で追い込んでも痛みが出ず、気持ちよく本番もできた」。近年では久々の1番滑走も「小さい時のよう。ジュニア時代は多かったので自信を持ってできた」と、初心に帰るいいきっかけになった。
転倒があったにもかかわらず、SPの今季世界最高得点で、2連覇に大きく前進した。得点には「ちょっとびっくり」。それでも、精彩を欠いて4位に終わったNHK杯から躍動感は格段に増していた。
表現力を示す5項目の構成点でも、NHK杯を上回った。ショパンのピアノ音楽を選んだ理由については、動きに強弱を付けづらい曲調で表現力を磨き、「進化したかったから」。20歳の五輪王者はようやく今季のテーマ「挑戦」と向き合える状態に戻った。
史上3人目、日本男子初の連覇の偉業に王手をかけた。フリー「オペラ座の怪人」は、中国杯では5度の転倒、NHK杯でも4回転で転倒と、ここまで不完全燃焼が続く。中学時代から「滑りたい」と思っていたというこだわりのプログラムを今度こそ完遂し、完全復活を証明する。