羽生首位発進 こけても100点超え
「フィギュアスケート全日本選手権・第1日」(25日、真駒内セキスイハイムアイスアリーナ)
男子ショートプログラム(SP)が行われ、4連覇の懸かる羽生結弦(21)=ANA=は4回転サルコーで転倒したものの、102・63点の高得点で首位発進した。2週前のGPファイナル(バルセロナ)でたたき出した110・95点の自身の世界記録は上回れなかったが、貫禄の演技。初優勝を狙う宇野昌磨(18)=中京大中京高=は、羽生に迫る97・94点で2位につけた。
羽生も人間だった。神懸かった演技で世界記録を連発したここ2戦の結果から“次はどんな得点を出すのか”という日本中が期待を背負いながら跳んだ冒頭の4回転サルコーでいきなり転倒。「正直、悔しいです」。演技後は真剣な表情で、サルコーを跳んだ位置を指さしながら、ジャンプの感覚を反すうした。
「同期、後輩、先輩がいて、ずっと日本語が使える。リラックスしすぎたかも」と笑ったが、結果では他の追随を許さなかった。その後の4回転-3回転、トリプルアクセルは完璧に成功。ショパンの「バラード第1番」のもの悲しい旋律と一体化し、リンクを疾走した。転倒はあっても、得点は非公認ながらソチ五輪のSPを上回る102・63点。「ワンミスでここまで出せたのは大きい」と、成長も実感した。
会場の真駒内は、3年前に全日本初Vを飾った思い出のリンク。ただ、羽生にとっては苦い記憶だ。今回と同じようにSPで断トツの首位発進。しかし、フリーでは冒頭2つの4回転ジャンプでややバランスを崩すなどミスが出た。
キャリア屈指の完璧な演技を見せた高橋大輔の猛追をしのぎ、初戴冠を果たしたが「負けたなと思ったし、会場もそういう雰囲気。優勝した後が非常に苦しかった」。王者の称号と、自身、そして周囲の評価のギャップに悩み、苦しんだ。
26日はフリー。五輪王者となり、GPファイナルでは男子史上初の3連覇を達成した。大みそかの紅白歌合戦の審査員を務めることも決定した。誰もが認める絶対王者として帰ってきたこのリンク。今度こそ問答無用の結果を刻む。