ジャパン史上初8強 奇跡じゃなく実力だ 決勝Tもビクトリーロード突き進む
「ラグビーW杯、1次リーグA組、日本28-21スコットランド」(13日、日産スタジアム)
A組は世界ランキング8位の日本が28-21で同9位のスコットランドを破り、4連勝の同組1位で初の8強入りを決めた。2015年の前回大会で苦杯をなめたフランカーのリーチ・マイケル主将(31)=東芝=が攻守でチームを鼓舞。WTB松島幸太朗(26)=サントリー=らが計4トライを挙げ、歴史的快挙を成し遂げた。20日の準々決勝で、B組2位の南アフリカと4強入りを懸けて激突する。
強い日本が、そこにいた。日本の強さを見せつけた。7万人近い観衆が歴史の証人。シャワーのように降り注ぐ熱い視線を浴びて、誇らしく抱き合い、たたえ合う。その中心に、リーチ主将がいた。
「すごくうれしいですけど、台風で避難している人たち、家族を亡くした人たちがいる。僕たちの戦いで少しでも勇気を与えたと思います」。第一声で気遣いを見せたところが、リーチ主将らしかった。
鬼がボコった。鬼が笑った。4年前も1次リーグで対戦。10-45で敗れた試合は、忘れられない屈辱だった。サモア戦を終えて「ボコる」と感情をあらわにした。11日の会見では「鬼になる」と宣言した。リベンジは果たされた。
タックルに行くたびにスタンドから「リーチ!」とコールされた。粉骨砕身、立ち向かった。ゲーム主将に復帰した一戦。「キャプテンが最強じゃないと勝てない」。その言葉通りのプレーでチームを引っ張った。
順風満帆ではなかった。2月下旬に恥骨の炎症を起こした。練習できない日々が続いた。治っては再発の繰り返しに「ジェットコースターみたい」と話す。埼玉に権威がいれば診察を受けた。ニュージーランドで腰と下腹部に特大の注射を打った。同じ故障を経験した他競技の選手の意見も求めた。
6月の宮崎合宿途中から練習に合流した。間に合った。「W杯、大丈夫かなと考えたときもあります。自分の中でここまでに治らなかったら、(辞退を)言わなければいけないというタイムがあった」。最悪の事態を覚悟した時期もあった。
ニュージーランドから札幌山の手高に留学した。練習量や、予想以上のレベルに驚いた。対戦相手に「あの外国人たいしたことないな」と言われて発奮して強くなった。日本で、日本流で育ったという自負があった。
「日本の選手は上手だけど、外から見た人は日本の選手をバカにする。それがイヤだった。それなら僕が日本代表に入って、強くして、もっとリスペクトされるようにしたい」。
試合を終えてリーチ主将が命じて、プロップ山本(ヤマハ発動機)らに作らせたチームソング「ビクトリーロード」を全員で歌った。過去の優勝国に、1次リーグで敗れたチームはない。日本の強さを見せた4連勝。「来週も勝つ気で準備する」。そのビクトリーロードは、さらに先に続く。