南アフリカ3度目の世界一!黒人初の大役成し遂げたコリシ主将「最高の感情」
「ラグビーW杯・決勝、南アフリカ32-12イングランド」(2日、日産スタジアム)
世界ランキング3位の南アフリカが同1位のイングランドを32-12で破り、2007年以来3大会ぶりの優勝で、ニュージーランドに並ぶ最多3度目の頂点に立った。今大会最多の7万103人の大観衆が詰め掛けた中、準々決勝で日本を26-3で退けた南アフリカが優勝杯「ウェブ・エリス・カップ」を手にし、44日間の祭典は幕が下りた。この結果、世界ランキングで南アフリカが10年ぶりに1位に返り咲き、イングランドは首位から3位に後退。次回W杯は23年にフランスで開催される。
少し肌寒い風が吹く横浜の夜に、7万人の歓声はいつまでも響いていた。とがった三日月が輝く夜空に、南アフリカのコリシ主将が、金色に輝くウェブ・エリス杯を高々と掲げた。開幕はまだ猛暑と湿気を残す9月20日。それから44日目。凜(りん)とした空気が張り詰める秋の夜に、世界王者が決まった。
「正直なところ、今の気持ちを説明できない。仲間の喜びの顔を見て、今までで最高の感情が生まれている」。代表50試合目の節目で勝ち取った栄冠。南アフリカ初の黒人主将は、穏やかな表情で思いを明かした。
ともに堅い守りをベースに勝ち上がってきた。前半はPGの応酬で12-6で折り返した。後半は両チーム2本のPGを決める一進一退の攻防。18-12で迎えた同26分、WTBマピンピがこの試合最初のトライ。さらに同33分にWTBコルビもトライ。試合を決めた。
両チームは07年決勝でも対戦。15-6で南アフリカがイングランドの連覇を阻止した。コリシ主将には当時の記憶が鮮明に残る。
「07年の優勝で、国が一つになった。大きな変化をもたらした。それ以降このチームのためにプレーする気持ちが強くなった」
アパルトヘイト(人種隔離)政策の影響を残す南アフリカ。エラスムス監督は「彼にはいろんな苦悩があった。靴がない。食べ物がない。学校にもいけなかった」とコリシ主将の境遇を明かす。「今、主将として、カップを掲げることを成し遂げてくれた」と感謝の思いを口にした。
主将就任は18年6月。相手はこの日と同じイングランド戦前だった。「最初は大変だった。就任が発表されたとき、母国で、そして世界中で、大変な騒ぎになった。プレーにも悪影響があった」と振り返る。
苦難のスタートから、チームをまとめ上げて今がある。その構造は今大会も同じだった。1次リーグ初戦でニュージーランドに敗戦。背水の陣を敷いて決勝トーナメント進出を果たし、準々決勝では日本に、15年の借りを返す勝利。1次リーグで敗戦しての優勝は史上初。逆境からはい上がった。
コリシ主将は「メンバーには、さまざまな階層の出身者がいる」と言う。チームの構成は、そのまま南アフリカの国民の縮図でもあった。
「僕たちの国にはいろいろな問題がある。いろいろなバックグラウンドや民族から選手が集まり、一つの目標に向かって一丸となった。国のために戦った。何かを成し遂げたいと思ったら一つになれるんだ」
世界制覇に、母国へのメッセージを込めた。