イ・ボミ、亡き父に捧げる涙の今季初V
「ほけんの窓口レディース・最終日」(17日、福岡CC和白C=パー72)
日本でも人気の美人プロ、イ・ボミ(26)=韓国=が亡き父に捧げる大会連覇を果たした。トップと1打差の2位からスタートし、6バーディー、ボギーなしの66をマーク。このコースでの大会新記録となる通算10アンダーで逆転優勝を飾った。昨年8月のNEC軽井沢72以来となるツアー通算9勝目。ホールアウト後は感極まって涙を流した。
涙声が18番グリーンに響いた。表彰式の優勝あいさつ。イ・ボミは「今年はお父さんはいないけど、お母さんと2人で頑張ってきて、優勝することができました…」。国境を超えた温かい拍手がギャラリーから湧き上がる。その真ん中でヒロインは真珠のような涙をぬぐった。
昨年9月14日、日本女子プロ選手権出場中に闘病中だった父・ソクジュさん(享年56)が亡くなった。大会を途中棄権して帰国し、最期をみとったが、心の傷は深く、その後優勝から遠ざかった。生前の父と約束した賞金女王もアン・ソンジュに譲った。
復活を期した今季は3月のアクサレディースから出場4試合連続2位。勝ち切れないもどかしさに「このままでは自分に負ける」と落ち込んだこともあったが、心の傷が癒え始めると、いつしか気持ちが変わってきた自分に気がついた。
「それまではお父さんのことを考えたら悲しくて、頑張る気持ちがなくなった。でも、今は思い浮かべたら笑うようにしています。だから今日も悲しい気持ちがなかったです」
父への思いを込めたボールは魂を得たようにピンを捉えた。4番はピンまで残り150ヤードを8Iで50センチにつけ、6番はピンの右2メートル。13番では残り145ヤードをフォローの風を計算して9Iで打ち、奥2メートルに乗せた。
ツアーに炊飯器を持参する母・ファジャさん(53)が作ってくれるエビ入りおにぎりがパワーの源だ。この日も10番で食べ、優勝の支えとなった。「100%のゴルフでした」と満足そうに振り返った。
待望の今季初優勝で獲得賞金は6717万円余となり、初のマネークイーンへ大きく前進した。「去年、お父さんに『賞金女王を取るんだよ』と言われてできなかったから今年は絶対取ります」。涙が乾いた瞳がはっきりと目標を捉えた。