キャンピングカー生活の稲盛、首位浮上
「男子ゴルフ・ブリヂストンオープン・第2日」(23日、袖ケ浦CC袖ケ浦=パー71)
7位から出た稲森佑貴(21)=グリーンゴルフ練習場=が7バーディー、2ボギーの66で回り、通算8アンダーで今季初の首位に浮上した。師匠でキャディーを務める父・兼隆さんとキャンピングカーで転戦する異色の若手が、待望のツアー初優勝を狙う。69で回った近藤共弘がトップに並んだ。
最終18番。8メートルのバーディーパットを沈めると、父・兼隆さんに笑顔で迎えられた稲森は、あどけなさの残る顔をほころばせた。
「ピンチでよく踏ん張って、チャンスの時に決めることができた。ショットとパットがかみ合ってくれた」
16歳でプロ転向後、バッグを担ぐ兼隆さんの運転するキャンピングカーで全国を転戦。遠征先では「道の駅」の駐車場に車を止め、「一番落ち着く」車内ベッドで寝る、つつましい節約生活をベースに腕を磨いてきた。
今季は出場した18戦のうち、予選落ちはわずか4戦。9月のアジアパシフィックオープン・ダイヤモンド杯で5位に食い込み、初のシード権を確実にした。「気持ちに余裕ができ、あとは突っ走っていくだけ」と意欲にも拍車がかかった。
約10年間、稲森の足となり、寝床となってきた“愛車”の走行距離は17~18万キロに及んだため、兼隆さんが新しい大型車を購入し、今季末の納車を待つばかり。「ボクも欲しい」と触発された稲森自身も、稼いだ賞金でレクサスの新車を買った。さらに、鹿児島市の自宅には火山灰対策でガレージまで作り、同じく納車を心待ちにしているが、その前に目指してきた結果を添えようと燃えている。
見据えるのは、ツアー優勝者とランク上位者ら30人で争われる日本シリーズJT杯(12月3日開幕、東京よみうりCC)初参戦だ。稲森は「今の目標は日本シリーズに出ること。トップにいるので、このまま自分のゴルフに徹して、優勝したい」。その言葉には、21歳の初々しさとは対照的に、苦労を重ね、培ってきたプロ5年目のしたたかさがにじんでいた。