松山英樹、練習で2種類のパターを使う理由 年間王者決定戦へ

 8月13日の男子ゴルフ、全米プロ選手権最終日。首位と1打差の2位から逆転でメジャー初優勝を目指した松山英樹(25)=LEXUS=はティーオフの1時間50分前に練習場に現れた。

 いつものようにパッティングの練習から始めた松山だが、今大会では独自のルーティンがあった。

 まずは従来のエースパターであるピン型でカップから5メートルほど離れた距離からボールを打ち、グリーンの状態を確認。その後、およそ1・5メートルの地点にパッティング矯正器具の金属板を置き、2本のティーを突き刺す。ティーの間隔はパターのヘッドの幅と同じ。軌道のブレを防ぐための工夫だ。ティーの前にボールをセットし、両手で3球、右手だけで3球、左手だけで3球、両手で3球、右手で3球、左手で3球、…。リズムよく、それを3回繰り返し、最後に両手で6球打つ。

 感覚をつかんだら今度は器具を使わず、1・5メートルから3球×3セット。ターゲットを変えて1・5メートルと2メートルからそれぞれ6球。もう一度、器具を使って両手6球、左手3球、両手6球、左手3球。周囲の空気がピーンと張りつめる。

 時刻は午後1時。開催地ノースカロライナ州シャーロットの気温は30度、湿度64%。頻繁にタオルで顔や体の汗をぬぐった。集中力を高めていくその様子は予選ラウンドと変わらないように見えたが、「なんか、日本ツアーでアマチュアでやってたときのようなね、緊張の仕方でしたね」と松山。メジャー初優勝の重圧は相当なものだったことがうかがえる。

 練習開始から15分。ここでパターをマレット型に替える。実際に今大会で使用するものだ。この前の週、優勝したブリヂストン招待から投入した。ピン型の時と同じ矯正器具を使って1・5メートルから3球。器具なしで5メートルと1・5メートルの距離からそれぞれ3球。それが終わると松山はショット練習のためにグリーンを後にした。

 マレット型でボールを転がしたのは時間にして3分だった。もちろん、ティーオフ直前に1番ホールの脇にあるグリーンでも練習する。それでも形状が全く異なるパターを、練習とはいえ、大会期間中に併用するのはリスクがあるように見えるが、そこには理由がある。

 「ずっとピン型でプレーしてきたので、練習ではそのパターで(自分の)状態を確認したいというのがすごくあります」。

 松山にとってピン型は感覚の基準となっているようだが、1アンダー15位で終えた初日、パターの選択について「きょうはギリギリまで迷ってました」と明かした。インスタートから10、11番の2連続、終盤の7、8、9番の3連続を含む6つのバーディーを奪う一方で4、5番では1メートルのパーパットを外すなどして5ボギー。31パットは全体88位で「あんまり調子がよくないので、いつか外すだろうなと思ってやったのが途中で来てしまったという感じですね」と振り返っている。

 2日目は7バーディー、ノーボギー。メジャー自己最少の23パットで首位に立ち、「今週はグリーンもすごく速く、みんながボコボコ入るというわけではないと思うので、逆に『入らなくても仕方ないんだと思いながらやっているのがいいのかな』と思いながらやりました」と心理面の部分を強調した。

 メジャー大会で自身初めて最終組でプレーした第3日は2オーバーの73、通算6アンダーで2位に後退した。耐えに耐えた18ホールのパッティングを振り返り、「ショットと同じくらい最悪ですね」と吐き捨てた。

 そして、迎えた最終日。後半の10番でこの日3つ目のバーディーを奪い、一時は単独首位にも立ったが、11番からまさかの3連続ボギー。同じ組で回ったジャスティン・トーマス(23)=米国=の勢いにのみ込まれるようにして敗れた。11番パー4でセカンドショットをグリーン右に外すミス。「すごく痛かった。アプローチとパットでしのげなかったのも痛かった」。16番で1・5メートルのパーパットを外した瞬間、マレット型パターを宙に投げて感情をあらわにした。

 ホールアウト後は勝ち切れなかった悔しさと、自身のふがいなさに涙が止まらなかった。目を真っ赤にしたまま応じた囲み取材では「これはやっぱり自信をもって打てるような技術がないのかな、という感じですね」と弱気な発言も。それでも最後は「これを次に生かしていけるようにね。なにをしたら勝てるか分からないですけど、もっと一生懸命練習したいと思います」と前を向き、「勝てる人になりたい」とも話した。

 24日からは年間王者を決めるプレーオフが始まる。今季は米ツアー3勝。ポイントで順位を競う「フェデックスカップ」はトップの松山。179・587ポイント差の2位にトーマスがおり、3位以下はジョーダン・スピース、ダスティン・ジョンソン、リッキー・ファウラーら強豪選手が続く。

 全米プロ選手権の後、1週間の“休養”を経た松山がどんなゴルフを見せるのか。使用するパターにも注目したい。

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