有村、涙の逆転復活V 万感のウイニングパット「いろんな事を思い出して…」
「女子ゴルフ・サマンサタバサ・レディース・最終日」(15日、イーグルポイントGC=パー72)
2打差8位からスタートした有村智恵(30)=日本HP=が6バーディー、ノーボギーの66をマークして通算13アンダーとし、逆転で2012年9月の日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯以来5年10カ月ぶりとなる通算14勝目を挙げた。2打差2位に青木瀬令奈と沖せいら、さらに1打差4位に小祝さくらが続いた。史上初の父娘同日優勝を目指した川岸史果は72で8アンダー8位に終わった。
16番で自身が首位に立つスコアボードを見た。有村は「もう1つバーディーを取れたら勝てる」。そう直感したという。
最終18番、残り96ヤードの第2打をピンそば2・5メートルに。6月のサントリー・レディースではプレーオフでこの距離を外し、優勝を逃した。「この5年あまり、自分を信じてボールを打っては自分にガッカリさせられる連続だった」という有村。だからこそ、スライスラインに打ち出したボールがカップに沈むと、何度も胸の前でガッツポーズ。復活を確信した、ウイニングパットだった。
「決まった瞬間、胸が苦しくなった。いろんなことを思い返して…」。後続の最終組はまだプレー中だったが、もう込み上げてくる涙をこらえていた。最終組がティーショットを終えた時点で優勝が決定。今度は大粒の涙がほほを伝った。
13年から米ツアーに挑戦。想像を超える苦戦が続き、14年は賞金ランク106位でシード落ち。15年は日本ツアーのシードもあったが、米下部ツアーに残った。田舎町を転戦する過酷な環境。「自分でカートを引いて試合もしましたし、毎週民泊。でも楽しかった。この優勝がなかったら、つらい思い出になっていたかもしれないけど」。東北高の2学年先輩でもある宮里藍さんに何度も泣きついたという。
16年4月の熊本地震をきっかけに日本へ戻った。それでもシード復帰もままならず、過去2年は予選会(QT)からのツアー出場。この復活の日へ、ジリジリと歩を進めてきた。「これからもできるだけ優勝したい。できるだけこのツアーにいたい。たくさんのギャラリーに囲まれて、これだけの地位にいる女子スポーツなんて、世界中でもそうないと思うんです」。30歳の笑顔は、いつになくはつらつとしていた。