【舩越園子の目】拳を突き上げなかったウッズのメジャー15勝目
「米男子ゴルフ・マスターズ・最終日」(14日、オーガスタ・ナショナルGC=パー72)
72ホール目。ウイニングパットを沈めたタイガー・ウッズが万歳のように両手を上げた仕草が素敵だった。大観衆に「一緒に万歳してくれよ」と呼びかけているようで、その仕草に復活優勝までの想いが凝縮されていた。
22年前。マスターズを初制覇した1997年大会のウッズは父アールさんと抱き合いながら「父子で挙げた勝利」にうれし泣きした。
以後、ウッズは勝利のたびに拳を激しく突き上げるフィストパンプで「我が勝利」を誇示した。当時の彼は動いたり叫んだりして、プレーを邪魔するギャラリーにしばしば厳しい視線を向けていた。
そんなウッズが不調や故障を経て、人々に感謝するようになった。昨秋、ツアー選手権で復活優勝を遂げたとき、大観衆に向かって万歳ポーズを取り、「みんなの声援が力になった」と感謝した。
ウッズの変化は、さらにファンを引き付けた。「再びここで戦えることがうれしい」と言った今年のオーガスタでは、一層大きくなった声援がウッズのさらなる力になり、彼を勝利へ導いた。
あの万歳ポーズは「ありがとう」というウッズの声。これまでのメジャー14勝とは異なる「みんなで挙げた勝利」の証。だからとても素敵だった。
(ゴルフジャーナリスト)