タイガー・ウッズ復活V 苦難乗り越え最強の男が最高の舞台で帰還
「米男子ゴルフ・マスターズ・最終日」(14日、オーガスタ・ナショナルGC=パー72)
2位から出たタイガー・ウッズ(43)=米国=が、自身初の逆転で11年ぶりにメジャー制覇を果たした。マスターズは14年ぶり5勝目。メジャー通算15勝、米ツアー通算81勝はともに歴代2位。近年は腰の故障や不倫スキャンダルなど私生活のトラブルで低迷していた元世界ランキング1位が、世界最高の舞台から力強く復活を告げた。
最高の舞台で、最強の男がカムバックを果たした。2位に2打差をつけて、ウッズがパトロンの待つ18番グリーンへ。約40センチのボギーパットを決めると、かみしめるように右手でガッツポーズ。今度は激しく両手を突き上げると、地鳴りのような「タイガー!タイガー!タイガー!」の大合唱に包まれた。
初めてメジャーを制した1997年のマスターズから22年。5度目の頂点は、メジャー通算15勝目。「うそみたい。これ以上ないドラマだった」。グリーン脇で待っていた娘のサムちゃんと息子のチャーリー君、そして母クルティダさんと熱い抱擁を交わした。
勝負どころを逃さなかった。モリナリと12アンダーで並んで迎えた15番パー5。3打目を池に入れたライバルを尻目に、ウッズは2オンに成功しバーディー。相手はダブルボギーで一気に3打差をつけた。さらに池越えの16番パー3は、グリーン右サイドからの傾斜を使ってピン下1メートル弱につけるスーパーショット。牙をむいた野獣のように連続バーディーで畳み掛けた。
08年にメジャー14勝目を挙げたが、その後は不倫スキャンダルなど私生活のトラブルや腰の故障で低迷した。17年4月に4度目の腰の手術を受け、一時は起き上がることすらできなかった。昨年1月に戦列に復帰し、同9月のツアー選手権で復活優勝。そして今回、自身初の逆転によるメジャー制覇。ファンが望んだ完全復活を、ついに成し遂げた。
かつてのような豪快なショットはない。ドライバーショットの平均飛距離294・5ヤードは44位。4日間でイーグルは一つもなかった。しかしウッズには確かな技術と、誰にも負けない経験がある。72ホール中58ホールでパーオンに成功し、80・56%は1位。「大混戦でみんなに勝つチャンスがあった。本当に大変だった。だからこんなに髪が薄くなるんだ」と優勝会見で笑いを誘った。
午後からの荒天予報でスタート時間が大幅に早まり、3人一組でプレーする異例の最終日。スコア提出後にクラブハウス内の部屋「バトラー・キャビン」でインタビューを受け、前年覇者のリードにグリーンジャケットを着せてもらった。その1分後。コース上からの退避を促す雷雨警報のサイレンが鳴り響いた。オーガスタの空も、名手の復活Vを待っていてくれた。