【綾子の視線】松山くんは注目される立場 普通にいさせてはもらえない
「米男子ゴルフ・全米オープン選手権・第2日」(14日、ペブルビーチ・リンクス=パー71)
16位から出た松山英樹(27)=LEXUS=は3バーディー、3ボギー、1ダブルボギーの73と落とし、通算イーブンパーで首位と9打差の32位に後退した。他の日本勢3人は予選落ちした。トップは65をマークして通算9アンダーのゲーリー・ウッドランド(米国)。タイガー・ウッズ(同)は松山と並び32位。3連覇を目指すブルックス・ケプカ(同)は通算4アンダーの6位。選手の心理や技術、勝負の流れなどを、デイリースポーツ評論家の岡本綾子氏が、自身の視線でお伝えする。
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トップに立ったウッドランド選手は、ノーボギーっていうのがすごい。年間100ラウンド以上プレーするとして、ノーボギーでのラウンドは1割もないと思う。それがメジャー大会で出るなんて鳥肌ものですよ。ウッドランド選手は明日が怖いんじゃないかな。
トッププロが口をそろえて言うのが「プレッシャーが自分の技術を増やしてくれる」ということ。クラブを振るのが怖くなる、というを経験することでジャンプアップできる。青木功さんは以前に「しびれる中で1ストロークをしのぎ合う。あれが好きだからゴルフをやっている」と言われていた。私もそれは、よく分かります。
フロント9は楽にクラブを振れていたのに、バック9に入ると急にクラブが上がらなくなる、なんて経験をしたこともあります。私が5、6勝目を挙げてから10勝目にかけてのころかな。「優勝」というものに「責任」を感じるようになる。また、注目される中での一打には「いい格好をしたい」「うまくなったところを見せつけたい」なんて虚栄心も出てくる。そういうものもプレッシャーになってくるんですよ。私は現役時代はずっと「1分、1秒、現在」という言葉を頭に入れていました。1分60秒を、1秒を、我慢することができれば耐えていくことができる。そういう戒めを自分の中に持っていましたね。
松山くんはどうしても注目される立場。(コースの)ロープの外では普通でいたいけど、普通にいさせてはもらえない。選手はみんな、いいスコアの時は笑っていられるけど、スコアが悪いと“への字口”になってしまうもの。その時に笑ってコメントするには覚悟がいります。それもトッププロの責任だし、大人になる過程の一つです。