【綾子の視線】渋野さんもようやく“ホンモノ”に
「女子ゴルフ・ツアー選手権リコー杯・最終日」(1日、宮崎CC=パー72)
3位から出た渋野日向子(21)=RSK山陽放送=は3バーディー、1ボギーの70で回り、通算7アンダーで古江彩佳と並ぶ2位。単独2位以上が逆転の最低条件だった最年少賞金女王はならず、1位に757万5351円差の2位に終わった。鈴木愛が6バーディー、2ボギーの68と意地を見せ、通算5アンダーで5位に食い込み、2年ぶり2度目の賞金女王に輝いた。選手の心理や技術、勝負の流れなどを、デイリースポーツ評論家の岡本綾子氏が自身の視線でお伝えする。
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今年の三つどもえの賞金女王争いは面白かった。最後までゴルフファンを興奮させてくれました。鈴木さんは左手首のけがなどで1カ月休みながら年間7勝したのは立派。渋野さんの国内外メジャー2勝も新人で大偉業ですが、私のMVPはやっぱり鈴木さんかな。申ジエさんも来年、どういう形でやってくるのか興味があります。
渋野さんについては今さら外野がどうこう言うより、コーチら周囲がどうサポートしていくか。彼女本来のキャラクターがなくならないようにしてほしい。また、今年これだけできたから来年はもっとこうできる、とより大きな期待をされる。これも不安です。私は現役時代、「なるようになるさ」「明日は明日の風が吹く」なんて言葉を胸にプレーしていましたから、渋野さんも気楽にやればいいんです。
全英女子を勝った時が顕著でしたが、10月ぐらいまではバックナインに伸ばす確率が高かった。それがここにきてバックナインでボギーをたたき、伸ばしきれないシーンが出てきました。これはやっと普通のゴルフができるようになってきたということ。18ホールのマネジメントを考え、ちょっとした駆け引きや1ストロークの差を分かって初めて“ホンモノ”になっていくのです。ビジネス界でも全体を見渡せる視野の広い人が出世していくのと同じ。渋野さんもようやく“ホンモノ”になってきました。本当に強くなるのはこれからです。
今年のツアーは賞金女王を争った3人以外にも、面白いキャラクターを持った選手がたくさん出てきて盛り上がりました。これも企業スポンサーが試合を開催し、キャラクターをアピールできる場所があるからこそ。来季も選手個々はしっかり、いいプレーをしてもらいたいと思います。
来年は東京五輪もあります。私の最大の希望は畑岡さん、渋野さん、鈴木さんの3人ともに世界ランク15位以内に入って出場枠を獲得すること。渋野さんと鈴木さんは日本ツアーで競い合って、世界ランクを上げていってほしい。期待しています。