愛ケガ乗り越え大逆転 昨季女子ゴルフ賞金女王争いをピックアップ
女子プロゴルフの「賞金女王争い」をピックアップ。昨季は鈴木愛(25)=セールスフォース、渋野日向子(21)=サントリー、申ジエ(31)=スリーボンド=が大激戦を展開し、シーズン最終盤に3連勝を飾った鈴木が逆転で2年ぶり2度目の女王の座に輝いた。
賞金女王争いは鈴木、渋野、申の3強が一歩も譲らず、最終戦までもつれ込む大激戦となった。
シーズンを通じてリードしたのは韓国、米国に続いて日本ツアーでの女王戴冠を目指す申。4月にスタジオアリスで優勝して賞金ランク1位に立つと、6月に1週だけ鈴木に逆転を許した以外は11月上旬まで1位を走り続けた。
中盤からルーキーの渋野が台頭する。5月にワールド・サロンパス杯で初優勝を果たすと、7月に資生堂アネッサで2勝目を挙げて賞金ランク2位に浮上。8月には国内賞金ランクには加算されないが、全英女子オープンを制覇する快挙を成し遂げ、勢いに乗って申を追随していく。
コンスタントに好成績を上げていく2人に対し、鈴木は苦しんだ。9月までに4勝を挙げてはいたものの、4月にタクシー乗車中に衝突事故に遭い腰を痛め、その後も左足首や左手親指、左手首の痛みで欠場が続く。試合に出られない日々を過ごし「ゴルフが本当に嫌になった」。9月から10月にかけて4週連続でツアーを休んだ。
この長期休みが状況を好転させる。家で炊事、洗濯をしたり、友人と食事に出かけたりと普通の生活をするうちに「ゴルフもちょっとやりたくなった」。4週連続欠場明け2戦目の樋口久子・三菱電機レディースで2カ月ぶり優勝を飾ると、ここから怒濤(どとう)の3週連続優勝。一気に申、渋野をまくり、シーズン残り2試合で賞金ランク1位に立った。
ただ、女王の座はすんなりとは決まらない。続く大王製紙エリエールで、渋野が4週連続優勝を狙った鈴木を1打差で退ける。前週に予選落ちして「もう賞金女王なんて口にしちゃいけない」と悔し涙をこぼした21歳が、1週後に意地の逆転優勝を果たして歓喜の涙をぬぐった。女王争いは三つどもえのまま最終戦、ツアー選手権リコー杯へと持ち込まれた。
逆転賞金女王へ単独2位以上が最低条件となる渋野は初日から3位と好位置をキープし、最年少女王の誕生にファンの期待を集めたが、2位タイに終わり賞金ランク2位でフィニッシュ。「悔しさはまったくない。まだ(賞金女王を)取るのは早いよって試練を与えられているんだと思う」と晴れ晴れとした表情を浮かべた。
最終日に68をマークして5位に食い込んだ鈴木が2年ぶり2度目の女王に返り咲き、「山あり谷ありの1年だった」。賞金ランク3位となった申は通算4アンダーで大会を終え、史上初のシーズン平均ストローク60台を達成してその実力を証明してみせた。