“ツアー引退”佐伯三貴が若手プロを育成「彼女たちを勝たせることが目標」
昨季限りでツアーの一線から退いた女子ゴルフの佐伯三貴(35)が新たな挑戦に乗り出している。若手プロ6人が“門下生”として集結。「彼女たちを勝たせることがこれからの目標」と、後輩の育成に力を注ぐ。
通算7勝を挙げた佐伯がツアーの一線から退くことを表明したのは昨年11月。「だんだん闘争心がなくなってきたというか、モチベーションが落ちてきたこともありますし、体が思うように動かなくなってきたこともあります」。13年間に及ぶツアー生活の中で腰や肩、手首などに痛みを抱え、満身創いの状態だったという。
現在は実家のある東広島市に在住。「これまではずっとゴルフが頭から離れることはなかったんですけど、今はそういうこともなくなりました。こないだのツアー初戦(アース・モンダミンカップ)もほのぼのとした気持ちで見させてもらいました」。リラックスタイムはお風呂。「去年まではずっと遠征続きでお風呂にゆっくり入ったことがなかったんです。今は入浴剤にこだわったり、本を読みながら1時間くらい入ってます」と笑う。
そんな佐伯が今季から本格的に力を入れるのが若手プロの育成だ。ツアー時代から飾らない性格と面倒見の良い姉御肌で若手からも慕われてきた。東北福祉大の後輩にあたる沖せいら(27)には3年前からアドバイスを送っており、昨年から田中瑞希(21)、山路晶(21)、菅沼菜々(20)を指導。さらに今年から田辺ひかり(23)と井上りこ(27)も弟子入りし、“門下生”は6人に増えた。
「彼女たちの人生も懸かっているわけだから私も生半可な気持ちではできない。褒める時は褒めるけど、厳しいこともはっきりと言いますよ」。今月下旬には東広島市に6人全員が集合し、佐伯の自宅に泊まり込みで合宿を行う予定だ。「みんなまだ基本ができていない。合宿ではスイングの方向性や目標を明確にしていければと思っています」
クラブを握る機会がめっきり減り「腕も飛距離も落ちている」と言うが、それでも「ちょっと練習すれば、私もまだまだ彼女たちには負けませんよ」と自信もちらり。全員がツアー未勝利。「みんないいものは持っているので、それを最大限、引き出してあげられれば。彼女たちを勝たせることがこれからの目標。自分が優勝して泣くんじゃなくて、彼女たちの優勝を見て泣いてみたい」
自身もツアーから退いたとはいえ、プロゴルファーを引退したわけではない。「推薦をいただければ試合には出たいと思っています。ツアー引退というよりは長期休養といったイメージでとらえています」と、将来的なツアー復帰の可能性も示した。若手の指導の傍ら、レッスン番組などテレビ出演の仕事も増えてきており、「自分の目指す方向性も見えてきました」。持ち前のポジティブ思考で第二のゴルフ人生も明るく前向きに歩んでいく。(デイリースポーツ・工藤直樹)
佐伯三貴(さいき・みき)1984年9月22日生まれ。東広島市出身。5歳からクラブを握り、武田高時代は全国高校選手権春季大会に連覇し、日本代表入りも果たす。東北福祉大でも日本女子学生を始め、数々のタイトルを獲得し、06年アジア大会では団体銀メダルに輝く。大学在学中の07年にプロ転向し、同年4月のフジサンケイレディースでツアー制度施行後史上最速(当時)となる初優勝を飾った。通算7勝。生涯獲得賞金は5億6934万7477円。