菅沼菜々 悲願のツアー1勝!「広場恐怖症」乗り越え同じ病気抱える人たちの“アイドル”に
「女子ゴルフ・NEC軽井沢72・最終日」(13日、軽井沢72G北C=パー72)
首位から出た菅沼菜々(23)=あいおいニッセイ同和損保=が涙のツアー初優勝を果たした。正規のラウンドを3バーディー、ボギーなしの69で回り、通算16アンダーで神谷そらとのプレーオフに突入。2ホール目でバーディーを奪って勝利。高校2年時から広場恐怖症を患うが、同じ病気に悩む人たちに希望の勝利を届けた。神谷は初日74位からの猛追も、大逆転優勝までわずかに及ばなかった。ペ・ソンウ(韓国)が3位につけた。
最後まで“アイドル”を貫いた。悲願の初優勝を成し遂げ、グリーン上へと降り注ぐ止めどない大歓声に、菅沼は涙をこらえながら右手を突き上げてニッコリ。だが、同学年の稲見萌寧と抱擁した瞬間、涙が止まらず本物の感情があふれ出た。
「そこで優勝したという感じが出た。去年は優勝争いで気負っていた自分がいた。見に来てくださるギャラリーに、私はアイドルが好きなので、アイドルになりきった気持ちでやり切れました」
初めて首位で迎える最終日。前日からティーショットが曲がる兆候があり、この日もフェアウエーを捉えるのに苦労した。ストレスがたまる展開だったが「アイドルは怒らない」と平常心を意識。正規のホールでは、ピンチもチャンスも得意の小技でカバーしてスコアメークした。
それでも、前日から勢いに乗る神谷が追いつき、勝負はプレーオフにもつれ込む。決着がついたのは2ホール目。2打目を残り127ヤードから1・5メートルにつける好ショットを放つと、先にプレーした神谷はパー。決めれば優勝の勝負どころで「ぷるぷるしていた」と緊張のバーディーパットをしっかりと決めた。
苦難の道のりだった。高校2年の電車移動時、突如「降りたくなった」とパニックに陥った。後に不安症の一種である『広場恐怖症』と判明。公共交通機関に乗れないため、ツアーは父でコーチの真一さん(55)が運転する車で移動する。
本州開催の試合出場に制限され、時には車で1000キロ以上の移動もある。ツアーでも過去6年で2位2回、3位6回と惜敗続き。厳しいプロ生活だが、つらさは表情に見せない。父は「良い意味で鈍感力がある」と明るく乗り切ってきた。
目には見えない病気だけに理解されないことは自身も経験。「ほかにも同じように病気に悩んでいる人がいる。そういう方に勇気を届けられたら」と菅沼。正真正銘、同じ病気を抱える人たちの希望の“アイドル”となった。
◆菅沼菜々(すがぬま・なな)2000年2月10日、東京都立川市出身。5歳の時に父の真一さんの影響でゴルフを始め、埼玉栄高校に進学。3年時には日本ジュニアで優勝した。18年プロテストに合格し、同年9月のミヤギテレビ杯ダンロップ女子でツアーデビューを果たした。昨季はツアー未勝利ながら、メルセデスランキング8位。好きな食べ物はうどん。身長158センチ。