岩井千怜 涙の開幕戦V 大会新18アンダー 西郷真央との激しい一騎打ち逃げ切った
「女子ゴルフ・ダイキン・オーキッド・レディース・最終日」(3日、琉球GC=パー72)
首位から出た岩井千怜(21)=Honda=が5バーディー、ボギーなしの67をマーク。西郷真央との激しい一騎打ちの末に、大会記録を4打更新する通算18アンダーで逃げ切り、昨年6月の宮里藍サントリー・レディース以来となるツアー通算5勝目を挙げた。2打差の2位に西郷、11アンダーの3位に菊地絵理香が続いた。3位から出た仁井優花は10アンダーの4位。吉崎マーナ(沖縄カトリック高1年)が34位で、ローアマを獲得した。
岩井千は最後まで張り詰めた緊張の糸をほどかなかった。3打リードで迎えた最終18番。グリーン右手前のバンカーから3打目を寄せて、2パットのパーで締めくくった。3度追いついてきた西郷とのしびれるマッチレースに勝利し、「ホッとしました」。グリーン上で、満開の笑顔で高々と右手を突き上げた。
何度も食らいつかれるのは想定内。「そのときが来たら意識するんじゃなくて、無心で変わらずにいこうと思った」とスコアが並ぶたびに、心を落ち着けた。1差の単独首位から出て、1番でいきなり追いつかれても「だろうな」と意に介さず、すぐに突き放しにかかった。
バックナインまでもつれた勝負も、得意の逃げ切りでものにした。ツアー4勝中3勝が最終日首位スタートからのもの。2メートルを沈めた14番で再び一歩リードすると、3日目にダブルボギーを打った15番パー4は「今まで以上に気持ちを強く冷静に」と気を引き締めてきっちりと2オン2パット。鬼門をパーでしのぎ、同ホールをボギーとした西郷を振り切った。
表彰式のスピーチでは思わず涙がこぼれた。厳しいオフのトレーニングが頭の中を駆け巡った。体を追い込むうちに食事が喉を通らず、気持ちが乗らない日もあった。それでも、きつい日々を乗り越えられたのは「負けたくないし、世界に行きたいのもある。あとは自分のため」。姉の明愛と励まし合いながら、心と体を鍛え、より一層たくましくなった。
「バーディーで皆さんに元気を届けたい」。今大会、受けた取材やインタビューでは最後に必ずそう話す。今季は「iwai SMILE Project」と題した社会貢献活動をスタート。姉妹のバーディー数などに応じて、元日の能登半島震災で被災した方々への義援金を寄付する。今大会だけで38万円の寄付金を積んだ。
「困っている人がいたら助ける」という父・雄士さんの教えを受けて育った姉妹だ。「自分が楽しんでいる姿を皆さんにお届けして、心の支えになったらいい」と千怜。開幕戦を皮切りに、今季はたくさんの元気を被災地に届け続ける。
◆大会レコードの270(通算18アンダー) 岩井千怜が達成。4日間大会では21年に小祝さくらが、3日間大会だった08年の宋ボベ(韓国)、15年のテレサ・ルー(台湾)が記録した14アンダーを4打更新した。