今井貞美が見る 松山と石川の差【上】

 「米在住レッスンプロが考える松山と石川の差」=上=

 2015年のPGAツアーは素敵な幕開けとなりました。日本人初のメジャー優勝の期待がかかる松山英樹選手は、年明け早々の2014年度のツアー優勝者だけが出場する招待試合「現代試合チャンピオンズ」で優勝こそ逃したが、1打差の3位タイ。米国でのテレビ放映でも、何度も画面に登場しました。

 昨年、米ツアー本格デビュー1年目で初優勝、しかもプレーオフという、心臓が口から飛び出しそうな状況の中での勝利。堂々たる体形で迫力まで感じさせる落ち着きは、今年も期待できそうです。

 石川遼選手と松山選手が米ツアーで共に頑張っていることはアメリカ在住の日本人にとって大きな楽しみになりました。2人というのが、ライバルであり、同時に同志。苦労も喜びも分かち合える仲間がいるということが頑張れる最良の状態だからです。

 しかしながら、最近の石川は松山とはライバルになれない。松山は2013年から14、15年と間違いなく上達をしているにもかかわらず、石川は変わらず。ゴルフに限らず、勝負事のプロたちは結果が明らかに出てきますから、はっきりくっきり練習生活の状態が見えてきます。ましてやテニスなど相手がある対戦スポーツと違い、すべては自分と自然との戦いなのだから…。ここにゴルフの難しさ、厳しさがあるのです。

 PGAツアーサイトに各部門、各選手のラウンドの統計が出ています。これはいわば選手の”通信簿”で、詳細にわたり分析されており、選手たちの平均数値も明記されています。毎年の数値がすぐに分かりますので、松山が上達していることが数値で分かり、石川が停滞!?失速?スランプ?いずれにしても、これで、現在、何の練習や、修正が必要か?どこから手を付けるのか?この選択を自分でできる人は良し。しかし石川は現在、何を一番最初にやらねばならぬのか、同時にどれを強化するのか、補足するのか?それを知る必要があります。

 余談になりますが、サンディエゴでティーチングプロをして、米ツアー、米女子ツアーやラテンアメリカのプロたちや有名な大学選手たちと知り合い、彼らがどのような道程で夢をかなえ、どんな生活や練習をしてきたのかをつぶさに見てきました。米国の選手たちの練習量、プロを目指すジュニアや大学生の学生生活など、たぶん日本人ゴルファーが想像できないほど勉強と練習に明け暮れていること…。それに比べて、日本からやって来たジュニアを含むゴルフ浪人たちのアメリカゴルフ遊学生活を見ると、まったく、悲しいほどに熱心ではありません。

 ぐるぐるぐるぐるラウンドしているうちにパーオンできるようになり、そのうち選手になれると、と~んでもない誤解をしていること。コースマネジメントを知らない、寄せは涙が出るほど悲しく下手。しかしながら、自分はゴルフで習うことはなく、経験を積めばだれでもプロになれると本気で確信しています。

 彼らのほとんどが腰を使った体重移動をせず、ボールは左足寄りに置き、すくい打ちで風に弱く、寄せはウエッジ1本だけで行うことが自慢のようで…。ボールは真っすぐに打つことだけが目標で、コースに沿ったカーブ弾道を作れない、だから刻むしかない。

 松山、石川の話に戻りましょう。松山の談話「ゴルフゲームの上達はエンドレスです」は、まったくその通りです。だから貴方は上達している。現役の選手ほど練習量が多いのです。でも当たり前だと思いませんか?勝てる選手にならないと。石川選手の談話「松山君は目標を高いところに置いています!」。だとすれば、スーパースターだった貴方の目標はどこに置いていたのですか?スター過ぎて練習時間がなかったのかもしれません。

 日本のゴルフ業界人が日本ツアー初日の前夜「あいつら(選手たち)は今ごろクラブで飲んでるよ」と。私は、悲しい現実を知りました。ツアープロは試合を何と考えているのか?。このアメリカに練習にやって来た現役選手が4~5人引き連れて偉そうにしている姿を幾度か見かけたことはあります。「自分も勝てないのに師弟の指導などしている場合じゃないでしょ!練習はどうなっているのよ」って言いたかったです(笑)。

 (Sadami USLPGA Class A Instructor)=つづく=

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 ★今井貞美(いまい・さだみ)1950年6月8日、東京都生まれ。84年に夫の仕事でカナダに渡り、93年から米サンディエゴで生活。45歳の時にゴルフの魅力を知り、それからわずか3年半でPGAティーチング・プロテストに合格。3年間PGAに在籍した後、LPGAのティーチングプロに移籍。米国内をはじめ日本でも指導を行い、小西健太(東北福祉大)らを育てている。

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