米国事情「カレッジゴルファー」=3=

 カレッジゴルフでも活躍した私の友人は、会計学を専攻して無事卒業しました。でも、テスト期間中は3週間も部活はなく勉強に明け暮れたそうです。「自分はPGAのツアープロを目指すけれど、なれるのか?なったにしても勝てるのか?だから大学ゴルフ部に行った。将来、生活していけないとね」彼の弁です。御意!!

 PGAツアープロの厳しさを本当に理解しているアメリカのゴルファー。大学は勉強とゴルフ部の部活だけで終わった-と断言しているゴルフ部員。ちゃらちゃら遊びたい時期に目いっぱいのスケジュールをこなし、卒業してきたこの人たちは、だからこそPGAツアープロのさらなる厳しい世界に入るための研修生だったのではないかと思うのです。ちょっと、大げさかもしれませんが…。

 大学ゴルフ部員のほとんどがツアープロを目指す-というのは間違いです。ほとんどが仕事に就くと思いますが。ツアープロを目指すのはカレッジゴルフ部でも地方、全米レベルで上位の成績を残す選手たちです。大変な世界なのです。

 部員の生活は、朝6時からトレーニング。朝食後、8時から授業。午後2時半くらいから同6時まで部活。夕食後は勉強、寝るのは深夜12時過ぎという生活を続けます。試合は通常週末。遠征試合などがある時は飛行機内や宿舎で宿題や勉強をしているのが当たり前。要するにスポーツ部だからといって特待生扱いなどあり得ないのです。

 スポーツと勉強の両立ができそうにない人は候補から漏れます。両立できそうにない人とは?既に成績が取れそうにない人、過酷なスケジュールをこなす体力のなさそうな人、情熱や集中力、活気のない人、努力ができそうにない人…。コーチ陣には分かるのです。

 NCAA Division1 National Championship 2015が、5月28日~6月3日まで開催されました。TVでも放映されるこの大会は、将来のスターが誕生するような、注目の大会です。LPGAのアリソン・リーは、UCLAのゴルフ部員で、この大会でも活躍した選手でした。しかし、今年プロデビューしてしまい、卒業に必要な単位は今夏取得する予定だとか。偉い!

 全米123校を6地区に分け、地方予選会でベスト5が残り、本戦は合計30校のチーム戦。各校5人の選手が出場します。個人戦も開催され、タイガー・ウッズ3回、フィル・ミケルソンも3回優勝しています。二人ともやっぱり、強かったのです!アメリカ大学ゴルフ対抗戦は、1897年イエール大、個人戦ではプリンストン大の学生が優勝しています。長~い間、ハーバード大を加えた3校の名前ばかり。1919年にコロンビア大、27年ジョージア工科大学の登場。

 アメリカゴルフの歴史は、映画にもなったボストンにある“The  Country Club”で始まったそうです。もちろんヨーロッパから入ったのですが。幸運にも2013年USアマ最終戦の開催コースだったので、私も参加する生徒の引率でじっくり過ごしたゴルフ場でした。ボストンの閑静な高級住宅地に位置する”The Country Club”は、映画のようにハイソサエティーの社交場だったのです。イエール、ハーバード、プリンストンなど、裕福な家庭のお坊っちゃまがクラブハウスに集まりゴルフを楽しんだ。大学生が楽しんだ!ボビー・ジョーンズもその一人。彼はゴルフで数々のタイトルを取りましたが、プロにはならずに弁護士として生きました。

 ハイソサエティー、インテリの人が始めたアメリカのゴルフ。1897年にカレッジゴルフ対抗戦が始まり、今日のNCAA National Championshipにつながっていることを思うと、不思議な気がします。まだまだ庶民のスポーツとは言えないけれど、少なくともハイソサエティーでなくともゴルフを楽しめる時代になっていることは確かです。

 (USLPGAインストラクラー・今井貞美)

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