寛平、9日間被災3県462キロを走破
東日本大震災からの復興を願い、被災した岩手・宮城・福島の3県を縦断する「みちのくマラソン」に挑戦していたタレント・間寛平(63)が21日、福島県いわき市の温泉施設・スパリゾートハワイアンズにゴールした。マラソンとヨットで地球一周も果たした鉄人は、13日のスタートから9日間462キロを走り切り、「もう長い距離はムリ。完全燃焼した」とあらためてラストランを宣言。今後は講演などでの支援活動に力を入れることを誓った。
“最後のゴール”を惜しむかのようにボケた。ゴール地点となった施設のステージに登った寛平は、ゴールテープを前にオロオロ。感激の瞬間を待ち構えていた後輩のたむらけんじ(39)らから「こっちや!!」と突っ込まれ、ようやく両手でガッツポーズを作り、ゴールテープを切った。
集まった1000人とともに「ありがとう三唱」を行った寛平は「とにかく暑かったけど、暑いとか言っていられなかった。被災地のことが走ってみてよく分かった。被災地に起こったことを忘れたらあかんで!」と声を張り上げた。
95年の阪神・淡路大震災で、兵庫県宝塚市の自宅の全壊を経験。しかし、「みちのくマラソン」の9日間で見た光景は想像を絶しており、言葉を失った。眼前に広がるのは家の土台だけ。道路のひび割れた部分からは草が顔を出していた。毎日、約50キロを走破後に仮設住宅に顔を出し、被災者の話に涙した。
ゴールの瞬間、左手には、沿道にいた3歳の子どもからもらった、ブリキの金メダルが握られていた。「オレのこと知ってるわけないのに『かい~のをやって』って言うんや」。ゴールまでに「数え切れないくらい」持ちギャグを披露した。「舞台ではウケないかもしれんけど、今回はずっとウケたんや」と、人の温もりに心を震わせた。
全行程を見守った妻・光代さん(54)は、寛平が「若いモンにはかなわんわ~」とこぼしていたことを明かした。それでも、靴を切り抜いてまで、右足親指の巻き爪の痛みに耐え抜いた姿に「体力じゃないんですよ。気力ですよね」と感服した。
アースマラソン中の10年に患った前立腺がんは、快方に向かっている。患部の痛みを訴えることもあるが、完治への過程で見られる症状で、日常生活に問題はない。
悔いのない走りができた。「しんどい、つらいとかまったく思わなかった。ラストランにふさわしい走りができた。完全燃焼した」。自身の夢のために地球一周も成し遂げた男が、被災者に寄り添った462キロ。寛平の明るい笑顔が、傷ついた地にパワーを与えた。