健さん、涙と笑いで受刑者を激励
俳優・高倉健(81)が26日、6年ぶりの主演映画「あなたへ」の撮影現場となった富山市の富山刑務所を表敬訪問した。
同刑務所に勤める刑務官を演じた高倉は、約350人の受刑者を前に撮影に協力してくれたことを感謝。「1日も早く大切な人のところに帰ってあげて下さい」と声を震わせながら激励し、受刑者の涙を誘っていた。
訪問はロケで協力してくれた刑務所や富山の人々に感謝を伝えたいという高倉の思いから実現した。同所は、高倉が演じた刑務官・倉島英二が亡くなった妻・洋子からの手紙を受け取り、長崎・平戸まで旅することを決意する場所。同時に、全国9050キロを旅した最初の地方ロケの場所でもあった。
二重の意味でのスタート地点に戻ってきた高倉は、受刑者を前に作品のテーマでもある「人を想うことの大切さ」を説くと、「1日も早く、あなたにとって大切な人のところに帰ってあげて下さい。心から祈ってます。どうぞお元気で出所して下さい」と声を詰まらせながら、語りかけた。
高倉をよく知る関係者によると、人前で涙を見せたことはないといい、高倉本人も「なぜだか涙が出た」と振り返った。だが、せつせつと語る高倉に、心を打たれた受刑者から大きな拍手が湧き起こった。
「網走番外地」(1965年)や「昭和残侠伝」(65年)など任侠映画で絶大な人気を誇った高倉だが、実は刑務所の内部で撮影したのは今作が初めて。以前に刑務所のすぐ近くでゲリラ撮影をしたときには職員に水をかけられたこともあったという。「自分は、日本で一番多く皆さんのようなユニホーム(舎房衣)を着た俳優だと思います」とあいさつし、笑いを誘うなど、異例の“舞台あいさつ”に感慨もひとしおだった。