高倉健、大滝秀治さんとの共演に感謝

 舞台、映画、ドラマと幅広いジャンルで活躍した俳優・大滝秀治(おおたき・ひでじ)さんが2日午後3時17分、肺へん平上皮がんのため、都内の自宅で亡くなっていたことが5日、分かった。87歳。1948年に劇団の養成所に入ってから俳優一筋64年で、高倉健(81)と共演した「あなたへ」(公開中)が遺作となった。

 健さんは“盟友”との別れを惜しみ、「本当に素晴らしい先輩でした」とコメントを寄せた。大滝さんの遺作となった映画「あなたへ」で、演技に感銘を受けて涙した。昨年11月、長崎県平戸でのロケ。たった一言のセリフが心に響いた。

 大滝さん演じる地元の漁師の船に乗り、妻の遺骨を海へ散骨した男(高倉)が港で礼をしようとする場面だった。

 「久しぶりにきれいな海ば見た」

 長い年月をかけ、さまざまな表情の海と向き合ってきた漁師の生きザマが込められていた。高倉は「正直つまらないセリフだと思っていたが、言い方と気迫でこんなにも変わってしまうのか」と感激すると、熱いものがこみ上げてきた。

 現場では涙を目撃しなかった大滝さんだが、6歳下の後輩の反応を知ると大喜びした。筆まめとあって、すぐに筆をとったという。大滝さんの娘むこで演出家の山下悟氏は「うれしく、照れくさかったのでしょう。本人は『またできるなら一緒に演じたい』と思っていたようです」と、大滝さんが高倉との再共演を望んでいたことを明かした。

 2人の手紙のやりとりは今年の9月まで続いた。「大滝さんの最後のお仕事の相手を務めさせていただき、感謝しております。今までにご一緒させていただいたいろいろな場面が思い浮かびます。本当に素晴らしい先輩でした。静かなお別れができました」。高倉は先輩の見せた名演技を胸にしっかりと刻んでいる。

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