染五郎舞台復帰で「勘三郎魂」継承誓う

 8月の舞台公演中に奈落に転落し重傷を負った歌舞伎俳優・市川染五郎(39)が13日、都内で、復帰舞台となる「二月大歌舞伎」(来年2月4~26日、東京・日生劇場)の製作発表会見に、父の松本幸四郎(70)、中村福助(52)とともに出席した。今月5日に亡くなった中村勘三郎さん(享年57)を悼んで、「歌舞伎に対して危機感を持っていたお兄さんの精神を受け継いで、生きている歌舞伎を作っていきたい」と“勘三郎スピリット”の継承を誓った。

 本来は晴れの席であるはずの復帰公演の製作発表だが、染五郎は終始、神妙で硬い表情を崩さなかった。

 「自分が(事故で)明日、いなかったかもしれないということを考えますと、生かされた責任、役目を全うし、2月の舞台から再び戦い続けたいと思います」。8月27日の転落事故で右側頭部打撲などの重傷を負いながらも、再び舞い戻ることができた舞台に、命の重みを感じながら全身全霊をかける覚悟をにじませた。

 「二月大歌舞伎」には幸四郎も出演し、復帰舞台に親子共演で花を添える。染五郎に先だってあいさつした幸四郎は「夢のようでございます。こういう日が来るとは一時は思いもしませんでしたし、胸いっぱいでございます。役者・幸四郎より父・幸四郎として、おわび、お礼を(公演の)口上で申しあげるつもりでございます」と息子の復活に喜びをかみしめた。

 染五郎は会見で、志なかばで人生の幕を閉じた勘三郎さんへの思いも明かした。勘三郎さんの代名詞ともなった「コクーン歌舞伎」に、94年の第1作から出演させてもらったことを感謝しつつ、「お兄さん(勘三郎さん)と『アレをやろう』と言っていただいていた約束を果たせぬまま、逝かれてしまったので、(手助けができず)反省するばかりです」と沈痛な胸の内を吐露した。

 歌舞伎界で次々と革命を起こした偉大な先輩の背中を見て、「いろんなものを吸収し、歌舞伎にしてしまうお兄さんの精神を受け継いで、大事にしていければと思っています」と次代の担い手として、決意を新たにした。半年ぶりに舞台で輝きを取り戻す染五郎の勇姿を、天国の勘三郎さんも優しく見守るに違いない。

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