桑田氏「体罰は見るのも嫌」撲滅訴える
プロ野球・巨人などで活躍した桑田真澄氏(44)が2日、大阪府市の教職員らを対象にした特別研修で講演し、スポーツ指導における暴力撲滅を訴えた。橋下徹大阪市長(43)の要望で実現。桑田氏は野球界などに根強く残る暴力指導が、戦前の軍隊教育や兵隊育成を引きずっていると指摘。自身が長年の野球生活で暴力を受けた経験を明かし、「体罰は見るのも嫌だ。僕をマウンドで助けてくれたことは一度もなかった」と語った。
大阪市立桜宮高校教員62人を含む大阪府市の教職員ら513人が出席した講演で、桑田氏は1時間15分にわたって体罰撲滅を訴えかけた。
非公開で行われた講演後に会見した桑田氏は「僕も長い野球生活で体罰を受けた。その経験を踏まえ、本音の話をさせていただいた」と語った。
桑田氏は暴力指導に反対する理由として、「体罰を受けるのも、やるのも、見るのも嫌だった」「絶対服従、仕返しされない関係の中で行われる一番ひきょうな行為」「理屈でなくダメなものはダメ」などと説明した。
講演では、こうした慣習が、戦前の野球界が軍隊に向け、精神鍛錬などの場だと存在意義をアピールしたことに起因すると指摘。桑田氏は「僕らの時代も当たり前とされたが、今は時代が違う」「やられた者が(後進に)やり返している。スポーツをやる資格がない」と批判した。
自身が米大リーガー時代に、米国の小中高や大学の現場を見て歩いたことを明かし、「怒鳴る、殴るは一切なかった。のびやかな環境からメジャーリーガーが生まれていた。体罰がなくても素晴らしい選手が育つ」と振り返った。
桑田氏の持論は、桜宮高の体罰問題発覚後、体育会出身の橋下市長が「僕も反省しないといけない」と体罰撲滅に乗り出すきっかけとなり、同市教委を通じ講演を要請。一連の橋下市長の対応をめぐっては同校保護者らから反発もあるが桑田氏は「進学にも影響はあるだろうが、声を大にして言いたいのは1人の尊い命が失われた重大さだ」と指摘。終演後、橋下市長が引き続き協力を要請し、桑田氏も快諾した。